第5章 国際的な安全保障環境の改善 

2 ゴラン高原国際平和協力業務


(1)UNDOFへの派遣の経緯など
 ゴラン高原の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF:United Nations Disengagement Observer Force)4は、停戦に合意したシリアとイスラエルの間に設定された兵力引き離し地域(AOS:Area Of Separation)に展開して国連平和維持活動を行っている。
 本活動への参加は、中東和平のための国際的努力に対するわが国の人的な協力としての意義を有しているほか、国際平和協力活動にかかわる人材養成としての意義も有する。
 政府は95(平成7)年12月、自衛隊の部隊などのUNDOFへの派遣を決定し、96(同8)年2月に、第1次ゴラン高原派遣輸送隊43名がカナダの輸送部隊と交代した。以来、約6か月交代で部隊を派遣し、本年5月末現在、第21次ゴラン高原派遣輸送隊が派遣されている。

(2)自衛隊の活動
 派遣輸送隊は、UNDOFの活動に必要な日常生活物資などを、イスラエル、シリア、レバノンの港湾、空港、市場などから各宿営地まで輸送しているほか、雨や雪でぬかるみ状態になる道路の補修や、標高2,800メートルを超える高原地帯での除雪作業などの後方支援業務を行っている。さらに、本年3月からカナダ隊に代わって任務についたインド部隊などと同一宿営地に居住し、隊員の給食などを共同で行っており、関係国との交流を深めている。
 空自は、派遣輸送隊に対する物資輸送のため、C-130H輸送機やU-4多用途支援機を半年に1度の割合で派遣している。
 
図表5-1-15 ゴラン高原周辺図

 UNDOFの司令部要員として自衛官2名が派遣され、輸送などの後方支援分野に関する企画・調整やUNDOFの活動に関する広報や予算関連の業務を行っている。司令部要員は、おおむね1年ごとに交代しており、本年5月末現在、第11次の司令部要員がUNDOFの司令部に派遣されている。
 UNDOFへの派遣期間は、当初、2年をめどとされていたが、国連からの強い要請、わが国要員の活動に対する国連や関係国からの高い評価、中東和平への人的協力の重要性などを考慮して総合的に検討した結果、これまで派遣を継続している。
 本年1月、わが国がUNDOFに派遣を開始して10周年の節目を迎えた。陸自はこれまでの間に、21個輸送隊、延べ約900人の隊員を派遣し、貢献を重ねてきたが、ここで得られた経験はほかのPKOやイラク復興支援活動などの基盤を育成してきたと言える。
 同月、現地宿営地においてUNDOF派遣10周年の記念式典を行った際、シャルマUNDOF司令官は、「日本の10年間の活動は大変素晴らしく全ての面においてプロフェッショナルである。」と述べ、自衛隊の活動を高く評価した。
 
図表5-1-16 UNDOFの組織


 
4)74(昭和49)年に設立され、シリア南西部のゴラン高原でイスラエルとシリア間の停戦監視と両軍の兵力引き離しなどに関する合意の履行状況の監視を任務としている。


 

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