刊行によせて 

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大臣写真・揮毫

 防衛庁・自衛隊をめぐる状況は、今や大きく変化しています。防衛庁の省への移行に向けた具体的な動きがあります。米軍再編に関する日米合意もなされました。イラクにおける人道復興支援活動も、大きな節目を迎えました。また、防衛庁は、昨今の一連の不祥事を受けて、国民の信頼回復に全力を傾けています。さらに、7月初めには、北朝鮮が、我が国を含む関係各国の事前の警告にもかかわらず弾道ミサイルの発射を強行するという極めて憂慮すべき事案が発生しました。
 今年の防衛白書は、こうした最近の状況を含め、我が国防衛にかかわる重要事項について、国民の皆様と諸外国の方々に御理解をいただくために作成したものです。

 まず、防衛庁の省への移行と国際平和協力活動などの本来任務化については、これを実現するための法案が、先般、国会に提出されました。防衛庁は、真の政策官庁として生まれ変わろうとしています。統合運用体制の構築やミサイル防衛能力の向上といったことだけでなく、防衛・安全保障を担う政策官庁に相応しい組織づくりと人材の育成など、これからも幅広い努力が必要です。

 また、米軍再編に関する日米合意の実施も、大きな課題です。私自身、抑止力の維持と地元の負担の軽減を基本的な柱に、我が国自身の戦略の問題として、この問題に、主体的・積極的に取り組んできました。先般の日米首脳会談における共同文書「新世紀の日米同盟」にもあるとおり、日米合意の完全かつ迅速な実施は、日米両国のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとっても必要であり、何としてもこれを実現してまいります。

 さらに、最近、イラクをめぐる状況について、重要な進展が見られるとともに、ムサンナー県において人道復興支援活動を行ってきた陸上自衛隊の部隊については、政府として撤収を決定しました。私も、昨年12月に自らイラクを訪問し、多くの隊員が各国の軍と協力し、厳しい環境の中で任務を立派に果たし、住民たちにも喜ばれているのを目の当たりにして、大変感動したことを思い起こします。イラクの人々に大きな喜びを与えながら陸上の任務を終えることができ、私は、これを誇りに感じます。

 他方、国民の信頼を損ねる懸案もありました。防衛庁・自衛隊に対する国民の期待と信頼が高まっているときこそ、身を厳正にしなければなりません。今般の防衛施設庁の入札談合事案に関して、全庁的な立場から監査を行う組織の新設や、地方で行われる調達のチェック体制の見直しなどの対策を講ずるなど、国民の信頼回復に向けた取組を、真摯に行ってまいります。

 我が国を含む関係各国による事前の警告にもかかわらず弾道ミサイルの発射を強行した今般の北朝鮮の行為は、我が国の安全保障や国際社会の平和と安定などの観点から重大な問題です。防衛庁・自衛隊は、引き続き、対応に万全を期してまいります。

 このような大きな変化の中で、隊員は、日々、緊張感と責任感をもって、それぞれの職務に当たっています。その一端は、この白書にも具体的に記されています。

 この防衛白書を、多くの方々にお読みいただき、忌憚のない御意見をいただけるよう、望んでいます。

 

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