第2章 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など 

第4節 統合運用体制への移行


 自衛隊の統合運用は、自衛隊の総合的かつ有効な運営を図るため、54(昭和29)年7月に陸・海・空幕僚長と統合幕僚会議議長で構成される統合幕僚会議(統幕)が設立されたことに始まり、時代の要請に応じて逐次その役割を広げてきた。しかし、実際に運用を行うにあたっては、各自衛隊がそれぞれの構想に基づいて個別に行動し、必要に応じて統幕が統合調整を行い対処するという「各自衛隊ごとの運用を基本」とする態勢をとってきたのが現状である1
 一方、軍事科学技術や情報通信技術の発達、これらによる戦闘様相の変化、さらには多種多様な事態の発生や新たな脅威の出現による国民の自衛隊に対する期待の高まりなど、自衛隊を取り巻く環境は変化し、役割は拡大している。これら多様化する役割などに速やかに対応し、将来にわたり自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するためには、平素から陸・海・空自衛隊を有機的かつ一体的に運用できる態勢が必要である。
 このような問題意識から、防衛庁では、02(平成14)年4月、各幕僚長と統幕に対して「統合運用に関する検討」を行うよう長官指示を発出し、同年12月には、これまでの「各自衛隊ごとの運用を基本」とする態勢から「統合運用を基本」とする態勢へ移行することの必要性を整理し、「自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの防衛庁長官の補佐の一元化」などについての施策をとりまとめた成果報告書が提出された2。また、03(同15)年12月に閣議決定された「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」において、「現在の組織等を見直して、統合運用を基本とした自衛隊の運用に必要な防衛庁長官の補佐機構等を設ける。」こととされた。
 そして、昨年12月に決定された新防衛大綱において、「統合運用に必要な中央組織を整備するとともに、教育訓練、情報通信などの各分野において統合運用基盤を確立する。」とされ、また、同時に決定された新中期防においても、「統合運用を基本とする体制を強化するため、既存の組織等の見直し、効率化を図り、統合幕僚組織の新設及び各幕僚監部の改編を行うほか、統合運用の成果を踏まえて、統合運用を実効的に行い得る組織等の在り方について、検討の上、必要な措置を講ずる。」とした。
 これらを踏まえ、平成17年度末において、自衛隊の新たな統合運用の体制を整備することとしており、本節では、統合運用の必要性、平成17年度における事業などについて説明する。


 
1)2以上の自衛隊を統合運用する場合、長官の補佐は統幕による統合調整によって行われる。統幕は合意を基本とするため、統合調整においては、各自衛隊ごとの作戦構想を整合させて一定の合意に達するまでの調整に時間を要し、結果として長官に対する迅速な補佐に支障をきたすおそれがあるとともに、事態の推移に応じてその都度相互に調整が必要となることから自衛隊の行う作戦全般が適切に行われないおそれがある。

 
2)『「統合運用に関する検討」成果報告書』
http://www.jda.go.jp/join/folder/seikahoukoku/cyou-houkoku.pdf



 

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