「安全保障と防衛力に関する懇談会」における検討(04(平成16)年4月〜10月)
昨年4月には、今後のわが国の安全保障と防衛力のあり方に関する政府全体としての取組について、幅広い観点から総合的な検討を行うため、小泉内閣総理大臣の下に安全保障、経済などの分野の有識者から意見を聴取することを目的とした「安全保障と防衛力に関する懇談会」
4(座長:荒木浩 東京電力顧問)が設置された。
同懇談会は、13回開催され、同年10月、報告書を小泉総理に提出した。
当該報告書では、新たな安全保障環境について、テロリストのような非国家主体の登場など主体・態様ともに複雑で多様な脅威に対処しなければならないとの認識を示し、その中で、日本の安全を確保するため、二つの目標(1)日本の防衛、2)国際的安全保障環境の改善による脅威の予防)を達成するため、三つのアプローチ(1)日本自身の努力、2)同盟国との協力、3)国際社会との協力)を適切に組み合わせて統合的に実行する必要があるという統合的安全保障戦略の考え方を示している。
また、その実践に当たっては、総理のリーダーシップの下、安全保障会議を活用するなど、安全保障についての意思決定の中枢的機能を整備するとともに、関係省庁の力を結集し、地方自治体や国民の協力を得て、国の総力をあげて施策の実施に取り組むなど、あらゆる面で統合性を確保することが必要であるとしている。
その上で、今後の防衛力については、統合的安全保障戦略を実践するため、少子化や厳しい財政事情などの制約も踏まえ、情報機能を強化するとともに、教育・訓練・整備計画などを改革し、防衛力を弾力的に運用することによって多様な機能(テロ対処、弾道ミサイル対処、国際協力など)を発揮できる「多機能弾力的防衛力」を追求すべきとしている。
これに加え、報告書では、統合的安全保障戦略を実現するための政策課題、防衛力のあり方について数多くの提言が盛り込まれており、新たな防衛計画の大綱に関しては、統合的安全保障戦略を進めるために国全体としてとるべき政策、その中で防衛力が果たすべき役割、自衛隊の保有すべき機能と体制を盛り込むべきとされた。
新防衛大綱における安全保障の基本方針、新たな防衛力の考え方は、こうした懇談会の提言の趣旨を反映させたものとなっている。