第2章 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など |
わが国の特性
わが国は、ユーラシア大陸の大国と近接しており、ユーラシア大陸東北部から太平洋への海上交通路の出口を扼(やく)する戦略上の要衝(ようしょう)に位置している。また、細長い弧状の列島で、長大な海岸線と本土から遠く離れた多くの島嶼(とうしょ)を有しており、このような中で、狭隘(きょうあい)な国土に多数の人口を抱えるとともに、特に都市部に産業・人口が集中し、経済の発展に不可欠である重要施設が沿岸部に多数存在するなど、地勢面において安全保障上、特に配慮すべき脆弱(ぜいじゃく)性を抱えている。また、地形、地質、気象などの自然的条件から、世界的に見ても、地震、台風、火山噴火などによる災害が発生しやすい特性を有している。
さらに、市場主義、自由貿易体制などの経済システムに基盤を置くわが国の持続的な社会経済及び国民生活の安定、発展のためには、国際的な安全保障環境の安定が不可欠である。とりわけ、わが国は、社会経済と国民生活に不可欠の原油の9割近くを中東に依存するなど自国の生存に不可欠な物資の多くを海外に依存するとともに、そのほとんどを海上輸送に依存していることから、海上交通の安全確保及び海洋の安定的利用はわが国にとって極めて重要である。