第2章 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など 

「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱について」(07大綱)

 51大綱策定後約20年が経過し、冷戦の終結など国際情勢が大きく変化する一方、カンボジアなどにおける国連平和維持活動や阪神・淡路大震災の対応など、自衛隊の役割に対する期待が高まっていたことなどを踏まえ、07大綱が策定された。その特徴は以下のとおりである。

(1)基盤的防衛力構想の基本的踏襲
 07大綱においては、ソ連の崩壊により、名実ともに冷戦が終結したことを受けて、1)不透明・不確実な要素をはらみながらも国際関係の安定を図るための様々な努力が今後も継続していくこと、2)わが国の安全及び周辺地域の平和と安定にとって日米安保体制が引き続き重要な役割を果たし続けるという点において、51大綱と基本的に同様の情勢認識を有していることから、これまで防衛力整備の指針として有効に機能してきた「基盤的防衛力構想」を成り立たせる前提に変わりはないと判断し、これを基本的に踏襲することとしたものである。
 なお、51大綱における「限定的かつ小規模な侵略については原則として独力で排除する」との表現については、限定的かつ小規模な侵略の蓋然性が特に高いというような誤解を招く向きがあったことなどに加え、後述するように、防衛力の役割の拡大などを踏まえ、わが国に対する侵略のみに焦点を当てたような表現はふさわしくないとの判断の下、削除した。

(2)防衛力の果たすべき役割の明示及び保有すべき防衛力の内容の見直し
 保有すべき防衛力の具体的な内容については、わが国周辺地域の一部における軍事力の削減や軍事態勢の変化が見られることに留意しつつ、その具体的なあり方を見直し、最も効率的で適切なものとする必要があるとしている。
 また、内外諸情勢の変化や国際社会においてわが国が置かれている立場を考慮すれば、自衛隊は、主たる任務がわが国の防衛であることを基本としつつ、「大規模災害など各種の事態への対応」、「より安定した安全保障環境の構築への貢献」という分野においても、適時適切にその役割を担っていくべきとしている。
 07大綱においては、以上の点を踏まえて、防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進めるとともに、必要な機能の充実・防衛力の質的な向上も図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備し、同時に事態の推移にも円滑に対応できるよう適切な弾力性を確保し得るものとすることが適当であるとしたものである。

 以上、07大綱では、防衛力整備の基本的な指針である基盤的防衛力構想は踏襲しつつ、国際情勢の変化や自衛隊の役割に対する期待の高まりなどを踏まえ、防衛力の規模や機能を見直すことに加えて、わが国が保有する防衛力を効果的に運用し、わが国の防衛のみならず、さまざまな分野において自衛隊の有する能力をより一層活用することを重視するものとなっているのが特徴である。


 

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