第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組 |
自衛隊の活動
(1)情報収集のための艦艇部隊派遣
01(平成13)年9月19日、内閣総理大臣発表の「米国における同時多発テロへの対応に関する我が国の措置」に基づき、海自は、護衛艦「くらま」、「きりさめ」と補給艦「はまな」により情報収集活動を行った。
情報収集の具体的な内容は、わが国の協力支援活動などの実施が予想される海域までの船舶・航空機の航行状況や気象・海象、寄港地の補給能力を含む港湾の状況などであった。
これらの情報は、その後の自衛隊の活動の安全確保や効率的な活動に役立ったばかりでなく、基本計画と実施要項策定のための基礎情報となった。
(2)アフガニスタン難民救援国際平和協力業務
01(同13)年10月、空自は、国際平和協力法に基づき
UNHCRのためのパキスタンへの物資輸送
7などを行った。
(3)海上自衛隊の被災民救援活動と協力支援活動
ア 被災民救援活動
海自は、テロ対策特措法に基づく被災民救援活動として、護衛艦「さわぎり」、掃海母艦「うらが」で、生活関連物資をパキスタン・カラチ港まで輸送した。具体的には、約200トンのテント、毛布などの救援物資
8を現地作業員とともに昼夜を徹して陸揚げし、01(同13)年12月12日入港当日からその翌日までの2日間で
UNHCR現地事務所へ引き渡した。同活動終了後、「うらが」は同年12月31日、日本に帰国し、任務を終了した。
イ 協力支援活動
情報収集のために派遣された3隻の艦艇は、01(同13)年12月2日から、協力支援活動として、インド洋で米海軍艦艇への洋上補給などを開始した。その後、補給艦「とわだ」と被災民救援活動に従事した護衛艦「さわぎり」がそれらに合流し、02(同14)年1月29日からは、英海軍艦艇への洋上補給などを開始した。
当初、協力支援活動としての艦船用燃料の提供は、米英軍に限定していたが、テロとの闘いにおける作戦遂行の効率性を高めるため、逐次、燃料補給の対象国
9を拡大し、本年5月末現在、11か国となっている。
また、昨年10月の基本計画の変更以降、艦船用燃料に加えて艦艇搭載ヘリコプター用燃料及び水の補給を開始した。
本年5月末までに行った燃料などの補給の実績は、艦船用燃料約40万2千キロリットル(延べ520回)、艦艇搭載ヘリコプター用燃料約300キロリットル(延べ18回)、真水約1,200トン(延べ20回)である。
これら洋上における補給は、補給艦の真横30〜50mの距離を同じ速力で航行する受給艦にホースを渡して、数時間(最長6時間)にわたり、等距離、同速力を維持しつつ並走しながら燃料を供給する作業であり、高い操艦技術と隊員の練度、忍耐を要する作業である。さらに、補給を行っている周辺海域では、すぐには国籍が確認不明の船舶や航空機が航行しており、作業を行う隊員は、常時、不測の事態に対応できる態勢を維持しなければならず、極度の緊張を強いられている。また、気象状況も外気温度は最高40℃を超え、甲板上は約70℃以上になることもあるなど、厳しい環境の下で隊員は忍耐強く任務を遂行している。
協力支援活動を行っている補給艦は、「とわだ」「はまな」「ときわ」に、昨年10月以降、「ましゅう」を加えた4隻から、常時1〜2隻が派遣されている。補給艦の警戒監視などに当たっている護衛艦についても、常時2〜4隻が派遣されている。
最近では、従来の国内における任務、訓練に加えて、近年活発化している防衛交流で海外へ派遣される艦艇が増加していることから、これら所要を満たしつつ、インド洋における協力支援活動及び国際緊急援助活動などの突発事案にも対応するため、計画的な部隊運用を行っている。
また、米軍が使用するアフガニスタンの飛行場施設の維持のための建設用重機などの海上輸送の具体的なニーズがあったことから、わが国の主体的な判断として、03(同15)年2月から3月にかけて、輸送艦「しもきた」と護衛艦「いかづち」により、タイ陸軍の建設用重機などをタイからインド洋沿岸国まで輸送した。
(4)航空自衛隊の協力支援活動
空自は、第1輸送航空隊(小牧基地)所属のC-130H輸送機をもって、01(同13)年11月29日から在日米軍基地間の国内輸送を、また同年12月3日から在日米軍基地とグアム方面などとの間の国外輸送を開始した。
輸送支援は、主にC-130H輸送機で行っていたが、在日米軍基地間の国内輸送に、02(同14)年7月以降、C-130H輸送機に加え、C-1輸送機の使用を開始し、昨年7月以降は、C-1輸送機のみで国内輸送を行っている。
これら輸送支援で、主として米軍の航空機用エンジン、部品、整備器材、衣料品などの物資を輸送している。
活動開始から本年5月末までに、協力支援活動として行った輸送は、国外15回、国内262回である。
(5)派遣部隊の福利厚生と隊員のメンタルヘルスケア
自衛隊は、不測の事態に対応できる態勢を維持し、常時、極度の緊張を強いられる隊員が安心して職務に専念できる環境づくりと士気の維持を図るため、隊員と留守家族の精神的不安を緩和する施策を行っている。
派遣部隊の福利厚生施策として、隊員と留守家族の絆を維持する態勢を整えるとともに、留守家族が隊員不在の間に不安を抱くことのないよう、留守家族に対し、親身かつ積極的な支援を行っている。
具体的には、派遣隊員と留守家族間での電子メールによる近況交換、各艦への臨時郵便局の設置による手紙の送付、隊員と留守家族に対して相互にビデオレターの提供、家族説明会などにより留守家族への情報の提供を行っている。さらに、家族相談室を設置し留守家族からの各種相談にも応じている。
また、メンタルヘルスケアの施策も行っており、隊員個人の精神衛生面でのケアを目的として、派遣前に指揮官などに対しメンタルヘルス教育を行うとともに、派遣中は艦内においてメンタルヘルスチェックを行い、事前にカウンセリング教育を受けた隊員が相談に応じる態勢をとっている。
7)テント(315張)、毛布(200枚)、ビニールシート(75枚)、スリーピングマット(20枚)、給水容器(400個)
8)テント(1,025張)、毛布(18,500枚)、ビニールシート(7,925枚)、スリーピングマット(19,980枚)、給水容器(19,600個)の総トン数約200トン
9)米英国に加え、03(平成15)年2月にドイツ、ニュージーランド、フランスと、同年3月にイタリア、オランダ、スペイン、カナダ、ギリシア、昨年7月パキスタンと交換公文を締結し11か国となった。 これらの交換公文は、わが国が支援対象国に対して行う協力支援活動が、テロ対策特措法に基づくものであることが明記されており、また、わが国が協力支援活動として提供する物品については、テロ対策特措法の目的に合致して適切に使用されるべきことを、支援対象国に対して繰り返し説明し、各国とも了解している。このことは、わが国が米国や英国との間で交換公文を締結したときと同様である。