「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱について」(51大綱)
51大綱の特徴は、防衛力整備の基本的な考え方として基盤的防衛力構想を取り入れるとともに、この構想の下、整備すべき防衛力の具体的な目標ないし水準を明示したことである。
51大綱は、70年代のデタント
2を背景として策定されたものであり、当時の国際情勢について、1)全般的には、様々な国際関係の安定化の努力などにより東西間の全面的軍事衝突などが生起する可能性は少ない、2)わが国周辺においては、米中ソの均衡的関係と日米安保体制の存在がわが国への本格的な侵略の防止に大きな役割を果たし続けるとの認識に立っている。
51大綱は、このような情勢が当分の間大きく変化しないという前提に立って、わが国の防衛力整備の基本的な考え方として、わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となってわが国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという考え方、すなわち「基盤的防衛力構想」を採用した。
この構想に基づいて、わが国が保有すべき防衛力としては、次のような考え方をとっており、わが国が置かれている戦略環境、地理的特性などを踏まえて、その具体的な規模を導き出し、別表において、各自衛隊の基幹部隊や主要装備などの枠組みを明示した。
1) 防衛上必要な各種の機能を備えること
2) 後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有すること
3) 平時において十分な警戒態勢をとり得るものであること
4) 限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものであること
つまり、51大綱で導入した基盤的防衛力構想は、わが国への侵略を起こさせないことに重点を置いた抑止効果を中心とした考え方であるということができる。