第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 

3 国際緊急援助活動への取組

 防衛庁・自衛隊は、人道的な貢献やより安定した安全保障環境の構築の見地から、国際緊急援助活動に積極的に取組むこととしている。具体的には、初めての国際緊急援助活動となった98(平成10)年のホンジュラスへの陸・空自の部隊派遣1、99(同11)年のトルコへの物資の海上輸送2、01(同13)年2月のインド地震3、昨年12月のイラン南東部地震に際しての援助物資の航空輸送などを行った4

(1)国際緊急援助隊法
 87(昭和62)年の「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(国際緊急援助隊法)の施行以来、わが国は海外、特に開発途上地域で大規模な災害が発生した場合に、被災国政府などの要請に応じ、国際協力事業団(現国際協力機構)を通じ国際緊急援助活動を行ってきた。
 また、92(平成4)年、国際緊急援助隊法が一部改正され、自衛隊が国際緊急援助活動やそのための人員などの輸送を行うことが可能となった。
 以来、自衛隊は、現地で移動、宿泊、給食、給水、通信、衛生などの支援が受けられない場合でも、その装備や組織、平素からの訓練などの成果を活かし、自己完結的に医療活動などの国際緊急援助活動を行う態勢を維持してきた。
 
自衛隊による国際緊急援助活動など

(2)自衛隊が行う国際緊急援助活動と自衛隊の態勢
 自衛隊が行う国際緊急援助活動は、個々の災害の規模や態様、被災国政府や国連など国際機関からの要請内容など、その時々の状況により異なったものになる。しかし、これまでの国内での各種災害派遣の実績から見て、
1) 応急治療、防疫(ぼうえき)活動などの医療活動
2) ヘリコプターなどによる物資、患者、要員などの輸送活動
3) 浄水装置を活用した給水活動
などの協力、自衛隊の輸送機・輸送艦などを活用した人員・資器材の被災地までの輸送を行うことができる。
 陸自は、医療、輸送の各活動やこれらに給水活動を組み合わせた活動をそれぞれ自己完結的に行えるよう、各方面隊が6か月ごとに持ち回りで任務に対応できる態勢を維持している。また、海自は自衛艦隊が、空自は航空支援集団などが、国際緊急援助活動を行う部隊や同部隊への補給品などの輸送ができる態勢を維持している。

(3)イラン南東部地震に際しての国際緊急援助活動
 昨年12月26日にイラン南東部で発生した地震により、ケルマン州を中心に甚大な被害が生じた。
 このため、イラン政府からわが国に対し、被災民のためのテントなどの救援物資の供与の要請があり、同月29日、外務大臣から防衛庁長官に対し、国際緊急援助隊法に基づく協力を求める協議がなされた。
 
イラン周辺図

 同日、防衛庁長官は、空自に対し、イランへの援助物資の航空輸送を行う旨の命令を発出した。これを受けて、空自は、輸送機(C-130H)2機、人員31名からなるイラン国際緊急援助空輸隊を編成した。
 同月30日、輸送機2機が小牧基地(愛知県小牧市)を出発、那覇経由でシンガポールにおいて緊急救援物資のテント60張と毛布2,000枚などを搭載し、マレ(モルジブ)などを経由して、1番機は本年1月1日、2番機は同月2日、イラン・ケルマン空港に到着し、援助物資をイラン赤新月社に引き渡した。その後、同月6日までに小牧基地に帰投した。
 
被災地を調査する隊員 輸送した援助物資を降ろすC-130H輸送機



 
1)ハリケーンにより大きな被害を受けた首都テグシガルパに陸自の部隊を派遣し、医療、防疫活動を行った。また、空自の部隊は、医療器材などの航空輸送を行った。

 
2)トルコ西部で発生した大規模な地震による被災民救援のため、国際緊急援助活動に必要な物資(仮設住宅)の輸送を海自の輸送艦など3隻で行った。

 
3)インド西部で発生した大規模な地震により大きな被害を受けたグジャラート州に対し、空自の部隊がテントなどの救援物資の航空輸送を行った。また、現地において陸自の部隊が空輸されたテントなどをインド側に引き渡すとともに、その組み立て要領の指導を行った。

 
4)資料39参照。


 

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