1 武力攻撃事態などへの対応に関する法制について
(1)わが国における法制整備の意義
わが国に対する武力攻撃など、国や国民の平和と安全にとって最も重大な事態への対処について、国として基本的な体制の整備を図ることは極めて重要である。中でも関連する法制は国家存立の基盤をなすものとして当然整備すべきものであり、また、わが国の長年の課題でもある。
さらに、このような法制の整備は、わが国に対する武力攻撃の抑止に資するほか、武力攻撃事態などにおけるシビリアン・コントロールの貫徹の観点からも重要である。
(2)法整備にかかるこれまでの取組など
一般論として、わが国に対する武力攻撃が発生した場合に必要な法制は、1)自衛隊の行動にかかわる法制、2)米軍の行動にかかわる法制、3)自衛隊と米軍の行動に直接かかわらないが国民の生命、財産を保護するための法制の3つが考えられる。これら3つの法制のうち、自衛隊の行動にかかわる法制については、いわゆる「有事法制研究」として、77(昭和52)年、当時の福田総理の承認の下、三原防衛庁長官の指示により、近い将来の国会提出を予定した立法準備ではないとの前提で開始された。この研究は、防衛庁所管の法令(第1分類)、防衛庁所管以外の法令(第2分類)、所管省庁が明確ではない事項に関する法令(第3分類)の3つに分類して行われ、第1分類と第2分類については、それぞれ81(同56)年、84(同59)年に、問題点の概要を公表した。
その後、99(平成11)年、与党3党は、第1、第2分類のうち、早急に整備するものとして合意が得られる事項につき立法化を図り、また、当面立法化の対象とならない事項と第3分類についても、今後、所要の法整備を行うことを前提に検討を進める旨合意した。
このような経緯を受け、02(同14)年2月、小泉総理は、第154回通常国会における施政方針演説で、「国民の安全を確保し、有事に強い国づくりを進めるため、与党とも緊密に連携しつつ、有事への対応に関する法律について、取りまとめを急ぎ、関連法案を今国会に提出します。」と述べ、政府として、具体的な法整備を進めることを明らかにした。
こうして、同年4月、政府は、武力攻撃事態対処関連3法案を同国会に提出した。
継続審査となった後、衆議院による一部修正を経て、昨年、第156回通常国会で成立した武力攻撃事態対処関連3法は、1)武力攻撃事態対処法、2)安全保障会議設置法の一部を改正する法律、3)自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律である。特に、武力攻撃事態対処法は、武力攻撃事態などへの対処についての、いわば基本法的な性格を有する法律であり、武力攻撃事態などへの対処に関する基本理念、国・地方公共団体の責務及び役割分担、武力攻撃事態などへの対処に関する基本的な方針(対処基本方針)などのほか、今後整備すべき個別の事態対処法制のプログラムを示している。