第3章 わが国の防衛と多様な事態への対応 

防空のための作戦

 わが国に対する武力攻撃が行われる場合には、周囲を海に囲まれたわが国の地理的な特性や現代戦の様相1から、まず航空機やミサイルによる急襲的な航空攻撃が行われ、この航空攻撃は反復されるのが一般的である。
 防空のための作戦は、侵攻側が攻撃の時期、地域、方法を選択できること、初動対応の適否が作戦全般に及ぼす影響が大きいことなどの特性を有する。このため、平素から即応態勢を保持し、継続的な情報の入手に努めるとともに、作戦の当初から戦闘力を迅速かつ総合的に発揮することなどが必要である。
 防空のための作戦は、空自が主体となって行う全般的な防空と、各自衛隊が基地や部隊などを守るために行う個別的な防空に区分できる。ここでは、この作戦の中核となる全般的な防空について説明する。
 全般的な防空においては、敵の航空攻撃に即応して国土からできる限り遠方の空域で迎え撃ち、敵に航空優勢2を獲得させず、国民と国土の被害を防ぐとともに、敵に大きな損害を与え、敵の航空攻撃の継続を困難にするよう努める。
 
警戒監視を行う早期警戒管制機(E-767)
(1)侵入する航空機の発見
 航空警戒管制部隊のレーダーや早期警戒管制機などにより、わが国周辺のほぼ全空域を常時監視し、侵入する航空機などをできる限り早く発見する。
(2)発見した航空機の識別
 自動警戒管制組織(BADGE:Base Air Defense Ground Environmentシステム)3などにより、発見した航空機が敵か味方かを識別する。
(3)敵の航空機に対する要撃4・撃破など
 敵の航空機と判断される場合、航空警戒管制組織により、地上又は空中5で待機する要撃戦闘機や陸自又は空自の地対空誘導弾部隊に撃破すべき目標を割り当て、管制・誘導された要撃戦闘機や地対空誘導弾で敵の航空機を撃破する。
 
防空のための作戦の一例(1)侵入する航空機の発見
 
防空のための作戦の一例(2)発見した航空機の識別 防空のための作戦の一例(3)敵の航空機に対する要撃・撃破など



 
1)現代戦においては、航空作戦は戦いの勝敗を左右する重要な要素となっており、陸上・海上作戦に先行又は並行して航空優勢を獲得するための作戦を行うことが必要である。

 
2)空において相手航空戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態。

 
3)自動化した航空警戒管制組織であり、指揮命令、航跡情報などを伝達・処理する全国規模の指揮通信システム。

 
4)来襲する空中目標を撃破するため、要撃戦闘機を発進させ又は地対空誘導弾を発射させること。

 
5)このとき、要撃戦闘機は空中警戒待機(CAP:Combat Air Patrol)の態勢をとるが、戦闘機が効率的に空中警戒のための待機を行うには、戦闘機の滞空時間の延伸を可能とする、空中給油機能が必要。


 

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