第6章 今後の防衛庁・自衛隊のあり方 

第1節 防衛力のあり方検討

1 あり方検討の意義

(1)あり方検討の前提
 2章で述べたとおり、防衛政策は「国を守る」という国家の根本政策であり、その実効性を確保していくためには、防衛力のあり方について、その時々の状況に応じて不断に見直しを行うことが必要である。その際、わが国の国益の観点から、安全保障面・防衛面におけるわが国のあるべき姿を念頭において、防衛力が果たすべき役割、その役割を効果的に果たすための体制改革の方策、日米防衛協力のあり方などを考えることが重要である。
 第156回通常国会(本年)においては、武力攻撃事態対処関連3法が成立したが、引き続き、わが国として、「危機に強い国家」、そして「国民が安全・安心に暮らせる国家」を作ることは重要であると考えられる。1章でも述べたように、冷戦が終結して世界は平和になるとの期待は残念ながら実現することはなかった。一瞬にして多くの人命を奪うことのできる大量破壊兵器やそれを極めて短い時間で運搬し得る弾道ミサイルの拡散、国民の人権や生活を顧みない独裁者や守るべき国家や国民を持たない恐るべきテロリストの存在は、従来の戦争概念を一変させるものであり、これらの脅威に対し、迅速的確に対応できる国家を目指すことが重要である。
 さらに、イラク人道復興支援特措法案、テロ対策特措法の一部改正案が閣議決定され、本年の通常国会に提出されたが、その基本的意義は、わが国として、国際社会において責務を果たし、世界から信頼される国家を作ることにある。相互依存関係の高まっている今日の国際社会において、特にわが国は、資源の多くを海外に依存しており、その繁栄は自由貿易体制などの経済システムと世界の平和と安定の上に成り立っている。わが国としては、今後、国際的な人道及び復興支援、国連平和維持活動による紛争の再発防止、国際テロリズムとの闘い、大量破壊兵器の拡散の防止、国際的な海上交通の安全確保などを含めて、より積極的・能動的にアジア・太平洋地域をはじめとする国際社会の平和と安定のための責務を果たしていくことが重要である。

(2)これまでの検討状況
 このような考え方の下、防衛力のあり方について十分な検討を行うため、2001(平成13)年9月、中谷前防衛庁長官の指示により「防衛力の在り方検討会議」を設置し、検討を開始した。それ以降、昨年1月からは、有識者からのヒアリングなどを実施するとともに、同年12月に発表された「国際平和協力懇談会報告書1」をはじめ、内外の各種の報告書や論文を参考にしながら検討を深めてきた。これらを踏まえ、本年1月からは、石破防衛庁長官の下で、国家安全保障における防衛機能として真に21世紀のわが国に相応しい防衛力の創造を目指すという観点から、幅広い問題を取り上げ、新たな発想やアイディアを重視しつつ、庁内における議論を精力的に重ねてきている。このような考え方に立って、将来における防衛力のあり方について、安全保障会議での議論を含め、政府全体で行われる検討に十分に資することができ、また、国民に対してもその状況を明らかにすることができると考えている。



 
1)4章3節コラム参照。


 

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