第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

テロ対策特措法の概要1 2

(1)目的
 01(同13)年9月11日に米国で発生したテロリストによる攻撃(テロ攻撃)が国連安全保障理事会決議(安保理決議)第1368号で国際の平和と安全に対する脅威と認められたことを踏まえ、併せて、安保理決議第1267号3、第1269号4、第1333号5その他の安保理決議が、国際的なテロリズムの行為を非難し、国連加盟国にその防止などのために適切な措置をとることを求めていることにかんがみ、わが国が国際的なテロリズムの防止と根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与するため、次の事項を定めてわが国を含む国際社会の平和と安全の確保に資することを目的とする。
ア テロ攻撃の脅威の除去に努めることで国連憲章の目的達成に寄与する米国をはじめとする諸外国の軍隊などの活動に対してわが国が行う措置など
イ 国連決議や国連などの要請に基づき、わが国が人道的精神に基づいて行う措置など

(2)自衛隊が行う活動
ア 協力支援活動
 諸外国の軍隊などへの物品・役務の提供、便宜の供与その他の措置であり、自衛隊を含む関係行政機関が行う。このうち、自衛隊が行う物品・役務の提供の種類は、図(自衛隊が行う物品及び役務の提供)のとおりである。

 
自衛隊が行う物品及び役務の提供

イ 捜索救助活動
 諸外国の軍隊などの活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者(戦闘参加者以外の遭難者があるときには、これを含む。)の捜索・救助を行う活動であり、自衛隊の「部隊等」が行う。捜索救助活動を行う自衛隊の「部隊等」は、その実施に伴いこの活動に相当する活動を行う諸外国の軍隊などの部隊などに対し、図(自衛隊が行う物品及び役務の提供)の協力支援活動を行うことができる。
ウ 被災民救援活動
 テロ攻撃に関連し、国連決議や国連などの要請に基づき、被害を受け又は受けるおそれがある住民など(被災民)の救援のために行う食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の輸送、医療その他の人道的精神に基づいて行われる活動であり、自衛隊を含む関係行政機関が行う。

(3)基本計画
 内閣総理大臣は、1)協力支援活動、2)捜索救助活動、3)被災民救援活動(対応措置)のいずれかを行うことが必要であると認めるときは、この対応措置を行うこと及び対応措置に関する基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。

(4)国会の承認
 内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊などが行う協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動については、これらの対応措置を開始した日から20日以内に国会に付議して、その実施について国会の承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、速やかに、その承認を求めなければならない。政府は、不承認の議決があった場合には、速やかに、これらの活動を終了させなければならない。

(5)国会への報告
 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を遅滞なく、国会に報告しなければならない。
ア 基本計画の決定又は変更があったときは、その内容
イ 基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果

(6)武器の使用
 協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊などの自衛官は、自己又は自己とともに現場に所在する他の自衛隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者6の生命又は身体の防護のため、やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、武器を使用することができる。その場合、正当防衛又は緊急避難に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
 武器の使用は、現場に上官がいるときは、原則としてその命令によることとし、この場合、上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命・身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、武器の使用が適正に行われることを確保する見地から必要な命令をする。

 
テロリズム防止・根絶に向けた国際社会の取組への協力の枠組

(7)その他
 この法律は、施行の日から2年で効力を失うが、必要がある場合、別に法律で定めるところにより、2年以内の期間を定めて効力を延長することができる。再延長する場合も同様である。



 
1)2001(平成13)年10月29日成立、11月2日施行されたテロ対策特措法。

 
2)平成14年版防衛白書 3章1節2参照。
http://jda-clearing.jda.go.jp/kunrei/w_fd/2002/honmon/frame/at1403010200.htm

 
3)安保理決議第1267号(1999.10.15)(骨子)
 タリバ−ンに対し、テロリストの保護と訓練の提供停止、領域がテロ行為の準備に使用されないことの確保、起訴されたテロリストを司法手続きにかける取組への協力を要請。タリバーンに対し、ビン・ラーデンを裁判にかけるために裁判継続国に引き渡すことを要請。

 
4)安保理決議第1269号(1999.10.19)(骨子)
 モスクワでの爆弾テロを受け、すべての国連加盟国に対し、テロ行為への資金提供の防止及び抑止、テロ行為に関連する者の逮捕、訴追、引渡しの確保などの適切な措置を要請。

 
5)安保理決議第1333号(2000.12.19)(骨子)
 タリバーンに対し、安保理決議第1269号の遵守、特にビン・ラーデンの引渡を求める。すべての国連加盟国に対し、ビン・ラーデン、同人と関係を有する個人と団体の資産凍結を決定。

 
6)不測の攻撃を受けた場合に、自衛官とともに行動して対処せざるを得ない立場にある自衛隊員以外の者で自衛官とともに共通の危険にさらされた場合に、その現場において、生命・身体の安全確保について自衛官の指示に従うことが期待される者をいい、例えば、次のような者が考えられる。1)自衛隊の診療所で治療中の傷病兵、被災民、2)自衛隊により輸送されている非戦闘員など、3)自衛隊の宿営地に所在する各国軍の連絡員、通訳、物品の搬入者、国内外からの視察者など。


 

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