第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

2 わが国のイラクの国家再建に向けた取組への協力

 米英軍などによる対イラク武力行使の結果、フセイン政権は事実上崩壊し、本年5月1日には、ブッシュ米大統領により「主要な戦闘の終結を宣言する演説」が行われた。しかし、一部地域では、未だフセイン政権の残党が散発的・局地的な抵抗活動を行っていることから、将来的にも、このような抵抗活動の可能性は排除しきれない状況となっている。
 このような中、国際社会として、イラク国民による国家再建を目指した自主的な努力を支援するため、5月22日、安保理決議第1483号1が採択され、国連加盟国にイラク支援のための取組が要請されることとなった。
 わが国は、同決議を踏まえ、国際協調の下、わが国の国益にとって非常に重要であるイラクを含む中東地域の安定の確保のため、わが国にふさわしいイラク復興支援などへの取組を行うことは当然であるとの観点から、現行法で実施可能なものを着実に実施するとともに、さらなる協力について幅広い見地から検討を行った。
 一方、イラク国内は、電力、通信(電話)、塵芥(じんかい)収集、下水処理、燃料供給などのライフラインの機能が十分機能していない上、医療(病院)・教育(学校)などの行政インフラが未だ不十分であり、人道面や生活インフラの面で厳しい環境にある。また、治安状況については改善の方向に向かっているが、未だ安定していない。各国軍隊への期待は、輸送、補給など様々なものがあるが、このような環境下において効果的な活動を遂行できる自己完結性を備えた自衛隊の能力を活用することが必要であり、また、文民による活動の必要性もあると考えられる。
 政府は、このような状況や、安保理決議第1483号を踏まえ、イラクの復興などに対し、わが国にふさわしい貢献として、自衛隊と文民による人道復興支援などのための活動を行うことが必要との結論に至り、本年6月13日、このための法案として「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(イラク人道復興支援特措法)案」を通常国会に提出した。同法案は、7月4日、衆議院を通過、7月26日には参議院で可決、成立した。
 また、政府は、安保理決議第1483号を受け、世界食糧計画(WFP)より、イラク周辺国などにおいて自衛隊機による輸送協力が得られれば、関係国際機関などの活動のための人道救援物資の輸送が一層効果的になる、との要望があったことなどを踏まえ、7月4日、国際平和協力法に基づくイラク被災民救援国際平和協力業務を行うことを閣議決定した。
 ここでは、イラク人道復興支援特措法の概要、イラク被災民救援国際平和協力業務の実施計画などについて説明する。

 
米軍の精密誘導兵器に攻撃されたイラク政府の建物(本年6月 バグダッド市内)



 
1)米英軍の占領軍としての特別な権限・義務を確認し、国際的に承認されたイラク国民による政府が設立されるまで、「当局」にイラク国民の福祉増進の権限を新たに付与。
 イラクの国民に対する人道上の支援、イラクの復興支援を行うこと、同国の安定と安全に貢献することを国連加盟国に要請している。


 

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