第3章 緊急事態への対応 

6 その他の対応

(1)在外邦人等の輸送態勢の整備
ア 自衛隊法の改正
 防衛庁・自衛隊は、これまで、外国での災害、騒乱その他の緊急事態に際して、自衛隊法第100条の8の規定に基づき、外務大臣の依頼を受けて、生命や身体の保護を必要とする在外邦人などを、政府専用機や航空自衛隊の輸送機で輸送する態勢をとってきた。
 1999(平成11)年の自衛隊法の改正により、在外邦人などの輸送手段として自衛隊の船舶とその船舶に搭載されたヘリコプターが追加され、また、隊員と邦人などの生命や身体を防護するため必要最小限の武器の使用ができることとなり、輸送のための態勢が強化された。
イ 各自衛隊の態勢など
 事態に応じた自衛隊の能力の活用ができるように、各自衛隊は輸送などのための態勢を整えている。
 なお、在外邦人などの輸送の任務は、基本的には各自衛隊が緊密に連携して行うため、統合調整が必要となることから、輸送機や輸送艦などを用いて統合訓練を実施するなど、任務遂行のための能力向上に努めている。
 また、派遣先国の空港・港湾などで、在外公館から在外邦人を引き継ぎ、航空機・船舶までより安全に誘導できるよう、陸自では誘導隊1の派遣に備えて普段から訓練を行うとともに、海自では輸送艦を、航空自衛隊(空自)では派遣要員を指定するなど待機態勢を維持している。

 
部隊における邦人等の輸送訓練(昨年9月 愛知県空自小牧基地)

(2)周辺事態への対応
 防衛大綱では、わが国周辺地域でわが国の平和と安全に重大な影響を与えるような事態が発生した場合、憲法と関係法令に従い、必要に応じ国連の活動を支持しつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ることなどにより適切に対応するとしている。
 具体的には、99(同11)年に制定された周辺事態安全確保法2や00(同12)年に制定された船舶検査活動法3に基づいて対応する。

(3)弾道ミサイルへの対応
 弾道ミサイルは、大量破壊兵器の運搬手段となり得ることから、その拡散は深刻な国際的課題となっている。
 弾道ミサイルの配備は、武力紛争を激化させる危険性が高く、また、軍事的対峙が継続する地域の緊張をさらに高めるなど、地域の不安定化をもたらす危険性が高い。
 わが国に対し弾道ミサイルが発射された際のわが国の対応については、その状況に応じ個別に判断することになるが、それがわが国に対する組織的・計画的な武力の行使であると判断された場合は、防衛出動により対処することとなる。
 一方、わが国に対する組織的・計画的な武力の行使であると判断できない場合、弾道ミサイルの着弾または落下により生じた被害を最小限に留めるという観点から、災害派遣を行うとともに、情報収集態勢をさらに強化し、事態の把握に努めることとなる。
 わが国は、現在、弾道ミサイルに対する有効な防御手段は有していないが、こうした弾道ミサイル攻撃の危険性への現時点における対応については、日米防衛協力のための指針の下、「自衛隊及び米軍は弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」こととされている4



 
1)輸送部隊(自衛隊の航空機・艦船)とともに派遣され、現地において在外邦人などの誘導・防護に当たる臨時に編成される部隊。

 
2)正式名称は、「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」(2章5節2参照)。

 
3)正式名称は、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」(2章5節2参照)。

 
4)細部は6章3節を参照。
なお、国際社会における弾道ミサイル拡散への対応については、4章4節を参照。


 

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