第2章 わが国の防衛政策 

わが国の安全の確保

 今日の国際社会において、自国の意思と力だけで国の平和と独立を確保しようとすれば、核兵器の使用を含む戦争から様々な態様の侵略事態、さらには軍事力による示威、恫喝(どうかつ)といったようなものまで、あらゆる事態に対応できる隙(すき)のない防衛態勢を構築する必要がある。しかしながら、わが国が独力でこのような態勢を保持することは、経済的にも容易ではなく、何よりもわが国の政治的姿勢として適切なものとはいえない。
 このため、自由と人権の尊重、民主主義といった基本的な価値観や、極東の平和と安全の維持への関心を共有し、経済面においても関係が深く、強大な軍事力を有する米国との二国間の同盟関係を継続し、その抑止力をわが国の安全保障のために有効に機能させることで、自らの適切な防衛力の保持と合わせて隙のない態勢を構築し、わが国の安全を確保することとしている。
 すなわち、日米安保条約では、第5条において、わが国に対する武力攻撃があった場合、日米両国が共同して対処することを定めている1。この米国の日本防衛義務により、わが国に対する武力攻撃は、自衛隊のみならず、米国の有する強大な軍事力とも直接対決する事態に陥ることを覚悟しなければならなくなる。このため、相手国はわが国に対する侵略を躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ず、侵略は未然に防止されることになる。



 
1)資料53参照。


 

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