先に述べたような活動が適切に行われ、わが国の平和と安全を確保するためには、日ごろから法制面、運用面、装備面において十分な体制を整えることが不可欠である。本節では、法制面や運用面での検討及び整備の状況を説明する。
一般論として、わが国に対する武力攻撃が発生した場合に必要と考えられる法制は、 自衛隊の行動にかかわる法制、
米軍の行動にかかわる法制、
自衛隊及び米軍の行動に直接かかわらないが国民の生命、財産保護などのための法制の三つが考えられる。
これら三つの法制のうち、自衛隊の行動にかかわる法制の研究は、1977(昭和52)年に内閣総理大臣の了承の下、防衛庁長官の指示によって、近い将来に国会提出を予定した立法準備ではないとの前提で開始された。
現行の自衛隊法などによって、わが国に対する武力攻撃が発生した場合の自衛隊の任務遂行(すいこう)に必要な法制の骨幹は整備されているが、なお残された国内法制上の諸問題の研究を行ったものである。この研究は、当然のことながら、現行憲法の範囲内で行ったものであり、例えば旧憲法下の戒厳令(かいげんれい)や徴兵(ちょうへい)制のような制度を検討対象とすることはあり得ず、さらには言論統制の措置なども検討の対象としていなかった。この研究は、防衛庁所管の法令(第1分類)、防衛庁以外の省庁所管の法令(第2分類)及び所管省庁が明確でない事項に関する法令(第3分類)の三つに分類して行われ、第1分類及び第2分類については、それぞれ81(同56)年及び84(同59)年に問題点の概要を公表した(資料18、資料19、資料20参照)。