第3章 国家の緊急事態への対応と日米安全保障体制に関連する諸施策

−国土と国民を守るために−

(写真)パキスタンに向け出発するC‐130H輸送機


パキスタンに向け出発するC‐130H輸送機

(写真)テロ対策特措法に基づき洋上補給を行う補給艦(左)


テロ対策特措法に基づき洋上補給を行う補給艦(左)

(写真)山間部におけるゲリラなどへの対処訓練


山間部におけるゲリラなどへの対処訓練

 わが国は、自ら適切な規模の防衛力を保持するとともに、日米安保体制を堅持することにより、いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制を構成し、これによって侵略を未然に防止することを防衛の基本としている。

 この防衛の基本に基づく各種の努力により、戦後、半世紀以上にわたって侵略の危機に遭うことなく、平和のうちに繁栄することができた。しかし、昨年9月11日に米国において発生した同時多発テロ(同時多発テロ)は、国民の生命と財産を脅かす想像を超える態様と規模の事態が現実に起こり得ることを示した。この同時多発テロに対し、政府としてとるべき対応を検討した。その結果、テロ対策特措法(注3−1)が制定され、自衛隊はこれに基づき活動を行っている。また、大規模なテロが国内で発生した場合の対処のための警護出動(注3−2)にかかわる自衛隊法の改正及び1996(平成8)年以来の検討事項であった不審船・武装工作員などへの対応にかかわる同法の改正が行われた。さらに、12月21日から23日にかけて発生した九州南西海域不審船事案は、不審船の中には殺傷力の高い武器を保有し、わが国の安全に影響を与えるおそれのあるものも存在することを明らかにした。

 このような状況も踏まえ、政府として、国民の生命・財産を脅かす国家の緊急事態に対処するための各種の検討を行ってきている。防衛庁・自衛隊は、海上警備行動、警護出動、治安出動、防衛出動などが下令されるような緊急事態に適切に対応していかなければならないと考えている。

 本章では、同時多発テロに対して行っている国際的なテロリズムへの対応及び国家の緊急事態への対応として防衛庁・自衛隊が担う各種事態への対応及びわが国の防衛について説明するとともに、緊急事態への対応においてもその一翼を担っている日米安全保障体制にかかわる諸施策について説明する。

第1節 国際的なテロリズムへの対応

1 米国における同時多発テロ発生直後のわが国の対応

同時多発テロ発生直後の対応

 昨年9月11日午後9時45分(日本時間)ごろに発生した米国における同時多発テロに対して、政府は当初から、「テロリズムとの闘いをわが国自らの安全確保の問題と認識して主体的に取り組み、同盟国たる米国を強く支持し、米国をはじめとする世界の国々と一致結束して対応する。」という基本方針を掲げ、国際緊急援助隊の派遣準備、米国関連施設の警備強化などを迅速に指示した。翌12日午前9時30分から安全保障会議が開かれ、邦人の安否確認など情勢の的確な把握に全力を挙げること、国内の米国関連施設の警戒警備を強化することなど6項目からなる「政府対処方針」(資料14参照)を決定した。防衛庁・自衛隊は、同時多発テロ発生後、速やかに中央監視チームをはじめとする要員を大幅に増強するなどの中央指揮所の態勢を強化するとともに、防衛庁の各種情報関係機関における情報収集態勢の強化を徹底した。また、全自衛隊施設の警備、特に米軍との共同使用施設である横須賀、佐世保(させぼ)、厚木、岩国(いわくに)、三沢の警備を強化した。さらに、警戒監視についてもその態勢を強化するための措置をとった。また、同時多発テロ発生直後、国際緊急援助隊派遣などに備えるため、政府専用機2機を、千歳(ちとせ)基地から羽田空港に移動させ、命令があった場合には速やかに羽田空港を出発できるよう態勢を整えた。その後、米国から国際緊急援助隊の派遣は当面必要ないとの回答があったことから国際緊急援助隊の待機が解除されたことを受け、同月13日にこの態勢を解除した。

(写真)安全保障会議に臨む小泉首相


安全保障会議に臨む小泉首相

(写真)政府専用機待機状況


政府専用機待機状況