新型哨戒(しょうかい)ヘリコプター(SH−60K)

 海上自衛隊は、本年度から新型哨戒(しょうかい)ヘリコプター(SH−60K)の調達を開始します。このSH−60Kの開発の背景には、軍事技術の進展による潜水艦の静粛化、高速化、アクティブソーナーに対する無反響化などの高性能化に加えて、哨戒(しょうかい)ヘリコプターが能登半島沖不審船事案など多様化する各種の事態に対してより効果的に対応することが求められるようになったことがあります。

 SH−60Kは1997(平成9)年から開発が始まりました。開発は現有の哨戒(しょうかい)ヘリコプター(SH−60J)をベースとして改造するという形で行われました。そのため、所要の性能向上を満たしながらも、艦上における運用や整備あるいは部品の調達などの後方支援については新型機になることによる影響を努めて抑制するとともに、開発コストを低減することが可能になりました。

 SH−60Kの性能向上に関する主な開発項目は次のようなものです。

 飛行性能に関しては、新型のメインロータ・システムを採用することで、飛行に必要な揚力を増大させることを図り、その結果、離陸時の最大重量を約1トン増加させることが可能となりました。さらに、キャビンスペースを拡大したことにより、輸送・救難などの多用途性の向上が図られています。

 搭載装備品の面では、ソーナーの高性能化や人工知能を活用した戦術判断支援機能及びSH−60Jにはない僚機(りょうき)の間で戦術情報を交換する機能を有した戦術情報処理表示装置(AHCDS:Advanced Helicopter Combat Direction System)を開発装備することにより、高性能化する潜水艦に対する対潜(たいせん)能力の向上が図られています。また、探知能力に優れ、イメージ映像を表示することのできる逆合成開口レーダー(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Rader)、夜間の視覚による探知を補う赤外線探知装置(FLIR:Forward Looking Infra−Red)を新規に装備し、対潜(たいせん)能力のみならず、対水上戦能力や警戒監視能力も向上されました。

 搭載武器に関しては、SH−60Jの魚雷に加えて、新たに対潜(たいせん)爆弾、対艦ミサイル、機銃の搭載を可能とし、多様な任務に適切に対応し得る能力を向上するとともに、自機防御装置(チャフ及びフレアー)(コラム注4)の装備により、ミサイル攻撃に対する残存性を高めています。

 軍事科学技術の進展や自衛隊が多様な役割を求められるようになったことに対応すべく開発された新型哨戒(しょうかい)ヘリコプター(SH−60K)は、本年度から調達を開始した7機が平成17年度から本格的に部隊配備される予定です。

ソーナーを揚収する試作2号機


ソーナーを揚収する試作2号機