アジア太平洋地域における多国間共同訓練
昨年来、米軍は、アジア太平洋地域の平和と安定への貢献のため、人道支援活動、災害救援や非戦闘員退避活動などにかかわるこの地域の円滑な多国間協力の推進やこれらの活動を通じた関係国間の信頼関係の増進を図るよう、これまでの訓練に人道支援活動などへの対応を取り入れるとともに、多国間での訓練の実施に取り組み始めた。具体的には、昨年6月のリムパックにおいて、国連機関とも協力しつつ難民救援訓練を行った。また、オーストラリア、フィリピン、タイとの間で従来から実施してきた二国間の演習を統合し、人道支援活動や国連平和維持活動などに焦点を当てた多国間共同演習(チームチャレンジ)を行う方向で関係国と調整を始めた。
こうした中、シンガポール海軍は、昨年10月に西太平洋潜水艦救難訓練、本年6月には西太平洋掃海訓練といった多国間共同訓練を主催した。
防衛庁としては、こうした多国間共同訓練への参加は、自衛隊の各種技量の向上はもとより、関係国間の各種調整や意見交換を通じ、相互理解の促進や信頼関係の増進に寄与するものと考えている。このため、招待があり意義が認められる場合にはオブザーバーを派遣したいと考えており、また、訓練自体についても、憲法・法律との関係を整理しつつ、わが国有事への対処を念頭に置いた訓練とのバランスなどを勘案した上で、可能であれば参加することが望ましいと考えている。
このような考え方に基づき、自衛隊は、前述のリムパックの難民救難訓練に海上自衛隊の幹部自衛官を、米軍とタイ軍を主体とし、またシンガポールが指揮所演習の部分に参加して本年5月に行われたコブラゴールド(チームチャレンジの一部として実施)に統合幕僚会議、各自衛隊などから幹部自衛官などをオブザーバーとして派遣した。また、シンガポール主催の西太平洋潜水艦救難訓練及び西太平洋掃海訓練には、海上自衛隊の戦術技量の向上はもとより、アジア太平洋地域における信頼関係増進などの観点からも意義深いことから、艦艇を参加させた。
(写真)西太平洋潜水艦救難訓練において調整中の各国指揮官
(コラム「西太平洋潜水艦救難訓練(PACIFIC REACH 2000)」参照)