情報RMA

 米国をはじめとする主要国では、軍事分野においてIT革命に端を発する変革を引き起こし得ると考え、RMA(Revolution in Military Affairs:「軍事における革命」)に対する研究や施策を進めています。
 防衛庁においても、RMAについて従来から種々の研究を行っており、まだ議論が尽くされているわけではありません。しかし、RMAの追求は、防衛庁・自衛隊にかつてない大きな変革を迫ることが想定されるため、国民に広く議論を知ってもらう必要があると考え、昨年9月、これらの諸研究を踏まえ、防衛局防衛政策課研究室が、「情報RMAについて」と題するパンフレットを作成し、公表しました。防衛庁における今後のRMAの本格的な研究においては、このパンフレットの内容にとどまらず、種々の議論がなされるでしょうが、ここでは、このパンフレットの概要を説明します。

 情報RMAという言葉から想像できる将来戦の様相について、コンピュータとそれらを結ぶネットワークが作り出す電子的空間に対する、ハッキングによる攻撃やコンピュータ・ウイルスなどの攻撃である「サイバー攻撃」によって勝敗が決するという考え方もあるでしょう。
 しかしながら、見通し得る将来において、情報ネットワークの破壊にとどまり物理的破壊を全く伴わないような形での戦闘が支配的になることはないと考えられます。
 したがって、本研究においては、将来戦の様相は、「サイバー攻撃」が併用されつつ、従来型の物理的破壊を伴う戦闘が、さらにハイテク化、情報化すると想定しています。
 たとえば、無人偵察機や偵察衛星を含めた多様なセンサー情報を総合することにより、戦場に関する情報(敵の兵力、装備や展開状況など)の戦場認識能力が向上するほか、そのようなセンサー情報を情報ネットワークを介して戦闘部隊に結びつけることにより、遠距離にある目標に正確に精密誘導兵器などの火力を指向させるといったシステム化による戦力発揮が可能となることが考えられます。この目標の正確な攻撃は、兵員や一般民間人の死傷の局限を求める現代社会のすう勢にも対応するものです。また、情報ネットワークによって各部隊が情報を共有することが可能となり、部隊が分散していても統一的な運用・戦闘ができることや、部隊の作戦域の拡大、作戦スピードの加速化なども考えられます。さらに、装備の自動化・無人化も進んでいくことも考えられます。
 このような将来戦に有効に対処するためには、防衛庁・自衛隊として情報RMAを施策化することは有力な選択肢の一つです。したがって、今後より本格的な研究を行う必要がありますが、その際には留意すべき点があります。
 たとえば、情報RMA化された軍隊に対して、テロ・ゲリラといった手段による攻撃も否定できません。このような攻撃に対しては情報RMA化した軍隊といえども、その優位性を十分に発揮できない可能性もあります。
 また、一般的に情報RMA化された軍隊の組織は意思決定などを迅速に実現できるよう不必要な中間指揮階層をなくしフラット化するとともに、部隊は小規模化すると考えられています。しかし、そのような部隊が災害派遣、平和維持活動などの多様化した任務に適切に対応できるか検討する必要があるでしょう。
 そもそも、前方展開能力やパワー・プロジェクション能力の維持という特有の軍事戦略を前提として情報RMAを推進している米国と、専守防衛を防衛政策の基本としているわが国とでは、必要とする兵器や能力は、自ずから異なってくるでしょう。
 これら以外にも様々な検討課題があることから、防衛庁としては、情報RMAの土台となり得る情報通信技術の革新の成果を積極的に取り入れつつ、わが国としてどのような情報RMAが必要かを十分検討した上で、それへの対応を決定すべきと考えています。

(コラム図表参照)

情報RMA概念図