周辺事態安全確保法の概要

(1) 目的

 周辺事態(そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態)に対応して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

(2) 周辺事態への対応の基本原則

  政府は、周辺事態に際して、適切かつ迅速に、必要な対応措置を実施し、我が国の平和及び安全の確保に努める。
  対応措置の実施は、武力による威嚇(いかく)又は武力の行使に当たるものであってはならない。
  内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
  関係行政機関の長は、対応措置の実施に関し、相互に協力する。

(3) 基本計画

 内閣総理大臣は、周辺事態に際して、自衛隊が実施する後方地域支援、特に内閣が関与することにより総合的かつ効果的に実施する必要のある関係行政機関の行う後方地域支援、後方地域捜索救助活動のいずれかを実施する必要があると認めるときは、当該措置を実施すること及び対応措置に関する基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。

(第3-35図)後方地域支援

後方地域支援


 基本計画では、対応措置に関する基本方針、自衛隊の行う後方地域支援及び後方地域捜索救助活動に係る基本的事項及び実施区域の範囲、関係行政機関による対応措置、地方公共団体等に対し協力を要請する内容などについて定める。
 なお、後方地域とは、我が国の領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。

(第3-36図)後方地域捜索救助活動

後方地域捜索救助活動


(4) 国会の承認

 内閣総理大臣は、周辺事態に際して、自衛隊が実施する後方地域支援又は後方地域捜索救助活動の実施前に、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を得なければならない。ただし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないでこれらの対応措置を実施することができる。
 国会の承認を得ないで対応措置を実施した場合には、内閣総理大臣は、速やかに、国会の承認を求めなければならず、不承認の議決があったときは、政府は、速やかに、当該対応措置を終了させなければならない。

(5) 自衛隊による後方地域支援及び後方地域捜索救助活動の実施

 防衛庁長官は、基本計画に従い、実施要項(実施区域の指定など)を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊などに当該活動の実施を命ずる。

(6) 関係行政機関による対応措置の実施

 関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、対応措置を実施する。

(7) 国以外の者による協力など

 関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。また、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。
 政府は、協力を求められ又は協力を依頼された国以外の者が、その協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずる。

(8) 国会への報告

 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
  基本計画の決定又は変更があったときは、その内容
  基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果

(9) 武器の使用

 後方地域支援を行う自衛官は、その職務を行うに際し、また、後方地域捜索救助活動を行う自衛官は遭難者の救助の職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。