自衛隊の多彩な部隊

 陸・海・空各自衛隊は、我が国の防衛の任務を遂行するため、直接戦闘を行う部隊とともに、その装備や隊員の能力を継続して発揮し得るように支援する多様な機能を備えた部隊を有しています。これらの部隊は、平素から、我が国に対する侵略や大規模災害など各種の事態に備える一方で、その組織、装備、能力をいかすことにより日々の国民生活にも貢献しています。
 ここでは本章で取り上げた内容に関連する部隊などから陸・海・空各自衛隊からそれぞれ一つずつ紹介します。
☆第1空挺(くうてい)団(陸上自衛隊)☆
 第1空挺団は、主として落下傘降投下により任務を遂行する陸上自衛隊唯一の部隊です。空挺団は、陸上自衛隊の機動運用部隊として、必要な時期と地域に各種の戦略あるいは戦術目的のために、通常、空挺作戦、状況によっては、ヘリボン作戦又は空輸などによる地上作戦に使用されます。
 千葉県船橋市に所在する空挺団は、1個普通科群、1個特科(とっか)大隊、対戦車隊などの直轄部隊及び空挺教育隊の8個部隊からなり、全体で約1,500名の隊員で構成されています。主要装備として、小銃、機関銃、無反動砲、対戦車誘導弾発射装置及び迫撃砲などを有しています。また、降下訓練などでは陸上自衛隊のヘリコプター(CH−47、UH−1)や航空自衛隊の輸送機(C−1、C−130H)の支援・協力を得ています。

(コラム写真4-9参照)

(コラム写真4-9参照)


 空挺団は、発足以来、現在までに約55万回の降下回数を数え、年間約200〜250名の空挺隊員を養成するとともに、降下長課程、空挺レンジャー課程などを通じてそれぞれの任務に必要な能力を身に付けるよう日夜訓練に励んでいます。
 空挺隊員にとって強靱(きょうじん)な体力と不撓不屈(ふとうふくつ)の気力は必要不可欠であるとともに、極めて困難な状況においても任務達成に邁進(まいしん)するといった資質と能力が要求されています。
 このように精強な部隊である空挺団は、災害派遣にも即応できる態勢を整えているほか、在外邦人などの輸送に際し、現地で在外邦人などを誘導するための陸上自衛隊誘導隊を迅速に派遣できるよう待機態勢を維持しています。

☆掃海(そうかい)部隊(海上自衛隊)☆
 掃海部隊は、1954(昭和29)年に海上自衛隊が発足して以来、海上保安庁から航路啓開業務を引き継ぎ、我が国周辺の危険海域の掃海に従事し、戦後日本の復興に大きく寄与するとともに、91(平成3)年のペルシャ湾への派遣など数々の業績を挙げてきました。

(コラム写真4-10参照)

(コラム写真4-10参照)


 本年3月13日、掃海部隊が改編されました。今回の改編は、防衛計画の大綱に示された新たな体制に移行するため、機動的に運用する掃海部隊を従来の2個掃海隊群から1個掃海隊群へ集約化したものです。また、掃海隊群司令部に幕僚長を新設して司令部機能を充実するとともに、集約化された掃海隊群隷下に掃海業務支援隊を新編しました。掃海業務支援隊は、機雷戦に必要な資料の収集、処理及び配布に関する業務を行うことなどを任務としています。
 集約化された掃海隊群は、神奈川県横須賀市に所在する掃海隊群司令部、掃海母艦2隻、5個掃海隊及び掃海業務支援隊をもって編成され、定員は約920名となっています。
 最近では、掃海母艦「ぶんご」が昨年のトルコへの仮設住宅の輸送を任務とした「トルコ共和国派遣海上輸送部隊」において、高い物資搭載能力をいかし、旗艦としての大役を果たしました。また、昨年10月から約1か月半にわたり神戸空港建設のための埋立工事現場において、多数の爆発性危険物を処理しました。

☆偵察航空隊(航空自衛隊)☆
 偵察航空隊は、偵察機による航空偵察を任務とする航空自衛隊唯一の偵察機部隊です。同隊は、偵察機に装備されている光学カメラ、赤外線カメラ、側方偵察レーダーなどにより、陸・海・空各作戦遂行に必要な情報資料を収集、獲得します。
 偵察航空隊は、百里(ひゃくり)基地(茨城県東茨城郡)に所在し、隊務を統轄する隊本部及び偵察機により航空偵察を行う第501飛行隊、航空機の整備を行う整備群、撮影してきた航空写真の現像、処理、判読などを行う偵察情報処理隊の3個部隊、約600名により構成されています。主要装備としては偵察機(RF−4E、RF−4EJ)及び練習機(T−4)を保有しています。
 地震や火山噴火などの災害派遣に際しては、航空偵察能力をいかして、被害状況の撮影や火山活動の偵察を実施し、関係機関への資料提供などを行っています。主な活動実績としては、阪神(はんしん)・淡路(あわじ)大震災時の偵察やナホトカ号の原油流出事故の状況確認などを行ってきました。また、91(同3)年長崎県島原の雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)の噴火において、気象庁の要請に基づき、雲仙普賢岳を上空から写真撮影し、気象庁の行う火山観測活動を支援しました。さらに、本年は、北海道南西部の有珠山(うすざん)における火山活動の偵察も実施しました。62(昭和37)年に偵察航空隊が創隊されて以来、本年3月末現在までに39件の災害派遣を行ってきました。
 このほか、平素から火山活動の状況把握や地震などの災害対処計画作成支援のため、日本全国を飛行して基礎資料(航空写真)の収集活動を行っています。

(コラム写真4-11参照)

(コラム写真4-11参照)