空中給油機能
空中給油機能については、次のように考えています。
・我が国は、専守防衛を旨とし、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使するなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略をとっています。このような受動的な防衛戦略の下で我が国の防空という任務を果たすためには、航空侵攻に対して、直ちに対処し得る態勢を維持していくことが重要です。
最近は、航空機のステルス化(注)が進み、レーダーによる探知が困難になるとともに、搭載されるミサイルの射程が長くなるなど、航空軍事技術の進歩には著しいものがあります。
このため、要撃機編隊をあらかじめ警戒のために、常に空中待機させ、目標の発見後直ちに要撃し得る態勢をとること(空中警戒待機=CAP(Combat Air Patrol))が必要不可欠となると見込まれます。
CAPを行う場合、要撃機は、基地からの発進、空中待機、基地への帰投を頻繁に繰り返さなければならず、結果的に多くの要撃機と操縦者が必要になります。しかし、空中給油機能を持つことにより、要撃機が空中で給油を受けて、警戒のための滞空時間を伸ばすことが可能になり、効率的にCAPを行えるようになります。
・日ごろの訓練でも、訓練する戦闘機は、基地と訓練空域との往復のため相当の飛行時間を費やしていますが、訓練空域で空中給油を行うことにより、効率的に訓練ができるようになります。
また、訓練する戦闘機の離着陸回数が減り、基地周辺の騒音対策にもなるとともに、基地周辺の天候が急変し予定の飛行場に着陸できない場合にも、燃料の少なくなった戦闘機に給油した上で他の基地に向かわせるなど、安全面の効果もあります。
さらに、一般に空中給油機能を有する航空機は、胴体上部にはスペースがあり、国際協力活動において多数の人員や、食料・医薬品といった小型の貨物を速やかに空輸することができます。例えば、1998(平成10)年に行ったホンデュラスでの国際緊急援助活動の場合、輸送機(C‐130H)が現地に到着するまで3泊4日を要しましたが、こうした移動時間を短くすることができると考えています。
(注)レーダー波が反射しにくい形にしたり、レーダー波を吸収しやすい塗料を使って、相手方のレーダーに映りにくくすること。