(2) ホンデュラスでの活動

ア 派遣までの経緯

 ホンデュラスにおいては、昨年10月27日から11月1日にかけ、ハリケーンにより甚大な被害が生じ、同年11月5日、同国政府から日本政府に対し、医療活動を中心とした救援活動を行うため組織力と自己完結性を有する自衛隊の派遣の要請がなされた。これを受け、同年11月9日、外務大臣から防衛庁長官に対し、国際緊急援助隊法に基づく協力を求める協議がなされた。
 このため、防衛庁は、現地調査を開始するとともに、派遣に関する具体的な準備を開始した。この現地調査の結果、自衛隊の部隊を派遣すれば、効果的な活動を行い得ると確認されたことから、同年11月13日、自衛隊のホンデュラスへの派遣を決定し、同日、航空自衛隊の派遣部隊が医療器材などを輸送するため小牧基地から、翌14日、陸上自衛隊の派遣部隊が成田空港から出発した。
(写真)ハリケーン「ミッチ」による被害を受けたテグシガルパ市内

ハリケーン「ミッチ」による被害を受けたテグシガルパ市内


イ 活動状況

 陸上自衛隊は、現地で医療活動や防疫活動を行うことを任務とする人員80名からなる部隊(ホンデュラス国際緊急医療援助隊)を編成し現地へ派遣した。また、航空自衛隊は、陸上自衛隊の部隊の装備品などの輸送を行うことを任務とする、人員105名、輸送機(C−130H)6機からなる部隊(ホンデュラス国際緊急援助空輸隊)を編成し現地へ派遣した。(第3-18図参照)

ホンデュラス周辺図

 陸上自衛隊の部隊は、同年11月18日(現地時間:同月17日)から、12月1日(同:11月30日)までの間、首都テグシガルパにおいて医療活動と防疫活動を行い、約4,000人を治療、約3万3,000m2を防疫した。
 航空自衛隊の部隊は、同年11月13日から12月9日までの間、日本とホンデュラスまでの区間において、医療器材などの往復輸送(往復約3万5,000km)と米国(テキサス)から現地の陸上自衛隊の部隊への追送品の輸送(往復約4,500km)を行った。
(囲み参照)ホンデュラスへの架け橋−初の自衛隊による国際緊急援助活動−

ウ 教訓・課題

 自衛隊が、初の国際緊急援助活動において、中米という遠隔の地で、被災後の劣悪な環境の下、現地の要請に応え、政府及び一般市民から感謝される立派な成果を上げたことは、今後、より安定した安全保障環境の構築に貢献していく上での極めて有意義な第一歩である。
 今回の活動を通して得られた主要な教訓・課題としては、以下のとおりである。
  派遣に際しては平素からの諸準備(現地のニーズに見合った要員候補者の選定、旅券の事前取得など)や各種の情報収集(現地の状況、国外運航に係る空港の状況の把握など)が重要であること
  今回の派遣は、派遣対象地域として想定していなかった地域であったが、米軍の支援などがあったため活動を円滑に行うことができたとは言え、自衛隊の現有能力上も、今後の体制整備上も派遣対象地域外への派遣の在り方について検討していく必要があること
  災害の発生から国際緊急援助活動の終結に至るまで、防衛庁と外務省・国際協力事業団との間で、緊密に情報交換を行うなど密接に連携をとることが重要であること
  医療活動を実施する場合には、現地の医療ニーズに見合った態勢を準備する必要があり、特に小児や女性への配慮が必要であること
 防衛庁としては、この貴重な経験を今後の活動に活かすべく、外務省などとも調整しつつ、検討を進めている。