ミサイルによる攻撃と自衛権の範囲について
我が国に対してミサイル(誘導弾等)による攻撃が行われた場合における我が国の自衛権の発動については、最近の国会でも議論されていますが、この問題について、国会で表明している政府の見解は次のとおりです。
まず、我が国がミサイル(誘導弾等)による攻撃を受けた場合の自衛の措置については、昭和31年に政府の見解として「我が国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段として我が国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」と述べています。
また、最近の国会において、「敵基地攻撃のための能力を保有することは憲法上許されるか」、「急迫不正の侵害がある場合とはいつの時点からか」などの議論がなされました。
このうち、敵基地攻撃のための能力の保有が憲法上許されるかについては、政府は、「昭和31年の政府統一見解に設定したような事例で、他に手段がない場合に、敵基地を直接攻撃するための必要最小限度の能力を保持することも法理上は許されるものと考えます。」と説明するとともに、我が国が現に保有する防衛力については、「現在の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系になっておらず、現時点において自衛隊が敵基地に対し軍事的に有効な攻撃を行うことは極めて難しい」こと、我が国に対する武力攻撃として行われたミサイル攻撃への対応については、「日米安保体制のもとにおきまして共同対処をする、この点につきましては、この新しいガイドラインにおきましても、『自衛隊及び米軍は弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮する。』」と明記されている旨説明しています。また、「急迫不正の侵害がある場合」については、「従来から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合を指しておりまして、この武力攻撃が発生した場合とは、侵害のおそれがあるときではなく、また我が国が現実に被害を受けたときでもなく、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したときである(と)解されている。」、「先制攻撃というものは、武力攻撃のおそれがあると推量される場合に他国を攻撃することで(あり、)我が国憲法9条のもとで許されない」と説明しています。