防衛庁・自衛隊
刊行によせて
 
 防衛庁は、我が国防衛の基本的な事項について、国民の皆様に正しく理解していただくために、昭和51年以降毎年防衛白書を刊行していますが、このたび23回目の白書を作成し、刊行することになりました。防衛白書を毎年刊行することは、我が国の防衛政策の透明性の証でもあり、我が国に対する諸外国の理解と信頼を高める上でも大きな意義があるものと考えます。
 国際情勢を見ますと、冷戦は終結したものの、依然として不透明・不確実な要素が残されており、これに対し、国際関係の一層め安定化を図るためのさまざまな動きが見られます。
 防衛庁としては、内外の状況の変化に適切に対応しつつ、我が国の平和と安全を確保していくためには、防衛大綱の理念に基づいて、防衛力の合理化・効率化・コンパクト化を進め、必要な機能の充実や防衛力の質的向上を図って防衛力の改革を行うとともに、日米安保体制の信頼性を向上させることが重要と考えています。
 そこで、基幹部隊の見直しや即応予備自衛官制度の導入などを行うほか、新しい時代におけるより効果的な日米間の防衛協力関係を構築することを目的として昨年の夏以来「日米防衛協力のための指針」の見直しに積極的に取り組んでおり、本年6月には、その作業の概要を中間とりまとめとして公表いたしました。同時に、これらの努力を補完するものとして、安全保障対話・防衛交流などを行うことによって、より安定した安全保障環境を構築するよう努めることも大切です。また、沖縄における在日米軍施設・区域に係る施策についても着実に実施することが必要です。それらの一方で、我が国に対する緊急事態が生起した場合に対処できるよう、法制度上の問題を解決することも重要です。
 一方、本年6月には、健全な財政構造の構築に向け、閣議において「財政構造改革の推進について」が決定され、財政構造改革を着実かつ強力に推進することとされました。この閣議決定においては、中期防衛力整備計画についてその所要経費の縮減を行い、本年中にその内容を見直すこととなりました。また、今後3年間にわたり防衛関係費については対前年度同額以下に抑制することなどとされ、非常に厳しい状況が見込まれるところであります。防衛庁としても、我が国の安全保障上の観点、さらには対外的な配慮についても十分勘案しつつ、閣議決定の実施のためにあらゆる努力を行う所存です。
 この白書が一人でも多くの皆様に読まれ、我が国の防衛をめぐるさまさまな問題について、理解を深めていただく一助となることを心から期待してやみません。

国務大臣 防衛庁長官
久間章生

防衛白書1997