防衛庁・自衛隊(特殊文字使用)

第4章 我が国防衛の現状と課題

第1節 防衛力の改革
 
 防衛大綱では、今後の我が国の防衛上について、規模及び機能の見直しを行い、
 
@ 合理化・効率化・コンパクト化を一層進めること
 
A 必要な機能の充実と防衛上の質的な向上を図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛上を整備すること
 
B 同時に事態の推移にも円滑に対応できるように適切な弾力性を確保し得るものとすること
が適当としている。
 
 防衛大綱に基づき、計画的に実施していく基幹部隊の見直しなどをはじめ、防衛庁は、さまざまな改革に取り組んでいる。
 
1 自衛隊の新たな体制への移行など
 
(1)基幹部隊の見直しなど

 防衛大綱では、陸・海・空各自衛隊の主要な編成、装備などの具体的規模などが示され、さらに「中期防衛力整備計画(平成8年度〜平成12年度)」(中期防)では、防衛大綱に定められた体制へ移行する過程を明示している。
 防衛庁は、以下のように陸・海・空各自衛隊の基幹部隊の見直しなどを行うこととしている。
 
@ 陸上自衛隊の基幹部隊など
 
 防衛大綱では、13個師団・2個混成団などを基幹部隊とする従来の18万人体制から、9個師団・6個旅団などを基幹部隊とする16万人(常備自衛官定員14.5万人、即応予備自衛官員数1.5万人)の体制に移行することとしている。中期防では、5個の師団について改編を実施し、その際、2個の師団については旅団に改編し、改編した師団及び旅団の一部の部隊を即応予備自衛官を主体として編成する。これらの改編を通じ、中期防計画期間末の編成定数は、おおむね17.2万人程度(うち即応予備自衛官員数おおむね5千人程度)に削減される。
 
A 海上自衛隊の基幹部隊など
 
 地方隊の護衛艦部隊について、防衛大綱では10個護衛隊を7個護衛隊にすることとし、中期防では2個護衛隊を廃止する。
 掃海部隊については、防衛大綱では2個掃海隊群を1個掃海隊群に集約化することとしており、中期防で移行を完了する。また、陸上哨戒機部隊については、防衛大綱では16個航空隊から13個航空隊にすることとし、中期防で移行を完了する。
 
B 航空自衛隊の基幹部隊など
 
 航空警戒管制部隊について、防衛大綱では28個警戒群を8個警戒群・20個警戒隊にすることとし、中期防では、2個方面隊の一部の警戒群を警戒隊に改編する。また、戦闘機部隊については、防衛大綱では13個飛行隊から1個飛行隊を削減して12個飛行隊とすることとし、中期防で移行を完了する。
 
C 統合幕僚会議の機能の充実など
 
 防衛大綱では、統合幕僚会議の機能の充実などによる各自衛隊の統合的かつ有機的な運用に特に配意するとしており、その観点から、中期防では、その機能の充実などについて検討を行い、必要な措置を講ずることとしている。
 
(2)即応予備自衛官制度の導入
 
 防衛大綱では、平時における効率的な部隊の保持や事態の推移に円滑に対応し得る弾力性を確保することを考慮して、陸上自衛隊の一部の部隊については、新たに即応性の高い即応予備自衛官を主体として編成することとされた。
 即応予備自衛官は、第一線部隊の一員として運用し得るよう従来からの予備自衛官よりも高い練度と即応性が必要である。この即応予備自衛官は、防衛大綱別表において1万5千人、中期防計画期間末においておおむね5千人程度を陸上自衛隊に導入することとされている。
 即応予備自衛官は、防衛招集命令、治安出動命令及び災害等招集命令により招集された場合に、自衛官としてあらかじめ指定された陸上自衛隊の部隊において勤務する。
 
(3)取得改革の推進
 
 今日のように、格段と厳しさを増している経済財政事情の下、装備のハイテク化などに伴い各種コストが増加している状況では、装備品の取得についての改善を、より総合的な観点から行っていく必要がある。
 
2 中期防衛力整備計画
 
(1)防衛力整備の考え方
 
 中期防衛力整備計画においては、防衛大綱に従い、以下の6つの柱を基本に防衛力整備を進めることとしている。
 
@ 防衛力の合理化・効率化・コンパクト化、
 
A 防衛力の機能の充実・質的向上、
 
B 防衛力の弾力性の確保、
 
C 日米安保体制の信頼性の向上、
 
D より安定した安全保障環境の構築への貢献、
 
E 節度ある防衛力の整備
 
 なお、本年6月に閣議決定された「財政構造改革の推進について」において、中期防を本年中に見直すこととされた。さらに、同月開催された安全保障会議において、政府として、本年中に中期防の見直しを行い、適切な結論を得るため、所要の検討に着手することとされた。防衛庁としても、政府見直し案作成の資とすべく、庁内に検討委員会を設けて所要の検討を行っている。
 
(2)基幹部隊の見直しなど
 
 中期防衛力整備計画においては、陸・海・空各自衛隊の防衛大綱で示された体制への移行などのため、中期防期間における基幹部隊の見直しなどについて、目標を示している。
 
(3)検討課題など
 
 空中給油機能については、空中給油機の性能、運用構想などの空中給油機能に関する検討を行い、結論を得、対処することとしている。
また、弾道ミサイル防衛については、その有用性、費用対効果などに関して、総合的見地から十分に検討を行い、結論を得ることとしている。
さらに、固定翼哨戒機(P−3C)及び輸送機(C−1)の後継機に関し、検討の上、必要な措置を講ずることとしている。
 
(4)所要経費
 
 中期防の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、平成7年度価格でおおむね25兆1,500億円程度をめどとしている。この際、各年度毎の予算編成に際しては、一層の効率化、合理化に努め、極力経費を抑制するよう努力するとともに、その時々の経済情勢、格段に厳しさを増している財政事情などを勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、この計画の所要経費の枠内で決定するものとしている。
このほか、中期防においては、将来における予見しがたい事象への対応、より安定した安全保障環境の構築などへの貢献などを特に必要と認める場合に安全保障会議の承認を得て使用する1,100億円を限度とする調整枠が設けられている。
 
3 平成9年度の防衛力整備
 
(1)主要事業

 本年度の防衛力整備は、防衛大綱の下、中期防を踏まえ、その2年目として、着実な防衛力の整備に努めることとし、特に以下の点について配慮している。
 
@ 防衛大綱に示された新たな防衛力の水準への円滑な移行に配意しつつ、基幹部隊の見直しを行う。
 
A 正面装備については、諸外国の技術的水準の動向に対応しうるよう、老朽装備の更新・近代化を基本とする。
 
B 自衛隊の維持運営、教育訓練などの実施に必要な所要の事業を推進するほか、生活関連施設の整備、処遇改善などの隊員施策を推進するとともに、引き続き、各種事業全般にわたって広く効率化・合理化を図る。
 
C 周辺諸国との信頼醸成を推進するため、安全保障対話などの活動について一層の推進を図る。
 
(2)防衛関係費

 平成9年度の防衛関係費は、平成9年度を財政構造改革元年とするとの政府の方針の下、防衛大綱、中期防に基づき編成され、後述のSACO関連経費を除き、前年度比1.98%増の4兆9,414億円となっている。なお、平成9年度予算においては、「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」関連経費について、上記とは別途、61億円が予算措置されているところであり、これを含めた防衛関係費の総額は、前年度比2.1%増の4兆9,475億円となる。
 
@ 防衛関係費の機関別内訳

 防衛関係費を陸・海・空各自衛隊、防衛施設庁などの機関別に分類すると別図のとおり
 
A 防衛関係費の経費別内訳

 防衛関係費は、経費別には、隊員の給与や食事となる「人件・糧食費」と、それ以外の「物件費」とに大きく分類される。物件費は更に、「歳出化経費」と、装備品の修理・整備、油の購入、隊員の教育訓練、新規装備品の調達などのためにその年度に支払われる「一般物件費」とに分類される。この分類に基づいて、9年度の防衛関係費を経費別に分類すると、別図のとおりである。
 このように、防衛関係費は、その年度の歳出予算でみると、人件・糧食費と歳出化経費という義務的な経費が約8割を占めている。
 また、一般物件費についても、装備品の修理・整備や教育訓練に対する経費、在日米軍駐留経費、住宅防音事業などの基地対策経費のような、維持的又は義務的な経費がかなりの部分を占めている。
 
4 財政構造改革への取組
 
 本年6月、「財政構造改革の推進について」が閣議決定されたが、同閣議決定において、「4 防衛」として、防衛力整備については、@中期防衛力整備計画の所要経費の縮減を行い、本年中にその内容を見直すこと、A集中改革期間中の防衛関係費については、対前年度同額以下に抑制すること、B装備品の調達価格の抑制など取得改革に努めること、また、「15 その他(3)」としてSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については着実に実施することとされた。
防衛白書1997