防衛庁・自衛隊(特殊文字使用)

第3章 我が国の防衛政策

第3節 日米安全保障体制
 
1 日米安全保障体制の意義
 
 激動する国際社会の中にあって、我が国は、戦後半世紀以上にわたり平和と繁栄を享受してきたが、この選択が極めて適切であったことはその後の実績が示している。
 我が国の繁栄と発展の要因としては、国民の努力に加えて、我が国が、自由主義諸国の一員として関係諸国との友好と協調を図ってきたことが挙げられよう。
 我か国が享受してきた平和と今日の繁栄は、我が国自身の防衛努力とあいまって、日米安保体制が抑止の体制として一貫して有効に機能してきたことが大きな要素であることは否定できない。
 また、日米安保体制は、我が国周辺地域の平和と安定の確保やより安定した安全保障環境の構築にも重要な役割を果たしている。
 
(1)我が国の安全の確保
 
 我が国への武力攻撃があった場合、日米両国は、日米安保条約により共同対処を行うこととなっている。この米国の日本防衛義務により、我が国への武力攻撃は、自衛隊のみならず米国の有する強大な軍事力とも直接対決することとなり、相手国は侵略を躊躇せざるを得ず、結果として侵略は未然に防止される。
 
(2)我が国周辺地域の平和と安定の確保
 
 日米安保体制を基調とする日米両国の緊密な協力関係は、この地域の平和と安定にとって必要な米国の関与や米軍の展開を確保する基盤となっており、このような日米両国間の緊密な協力関係や米軍の存在は、米国と地域諸国との間で構築された同盟・友好関係とあいまって、我が国周辺地域における平和と安定を確保するために重要な役割を果たしている。
 
(3)より安定した安全保障環境の構築
 
 日米安保体制を基調とする日米両国の協力と協調は、安定化のための努力が重視されている冷戦終結後の国際社会において、より安定した安全保障環境を構築するために重要な役割を果たすものである。
 
2 日米安全保障体制の信頼性の向上
 
 日米安保体制は、冷戦後も、我が国の安全の確保にとって必要不可欠なものであり、また、我が国の周辺地域の平和と安定を確保し、より安定した安全保障環境を構築するためにも引き続き重要な役割を有しており、その信頼性の向上を図り、これを有効に機能させていくよう努力していくことが重要である。
 こうした観点から、日米双方は、政策協議や情報交換を緊密に行いつつ、新しい時代におけるより効果的な防衛協力関係を構築することを目的に、「日米防衛協力のための指針」の見直しに着手したほか、日米共同訓練や装備・技術面での相互交流、在日米軍の駐留を円滑に行うための諸施策などを積極的に行っている。
 
3 日米安全保障共同宣言
 
(1)  日米両国は、日米安保体制の意義・役割について緊密な協議を行ってきたが、その成果の集大成として昨年4月に日米安保共同宣言が橋本総理とクリントン大統領の間で発表された。
 
(2)  この共同宣言においては、まず、日米安保条約を基盤とする日米同盟関係が21世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎でありつづけることを再確認した上で次の事項について改めて確認している。
@ 日本防衛のためのもっとも効果的な枠組みは、自衛隊の適切な防衛能力と日米安保体制の組み合わせに基づくものであり、日米安保条約に基づいた米国の抑止力は引き続き日本の安全保障のよりどころであること
A 現在の安全保障情勢の下で米国のコミットメントを守るためには、日本におけるほぼ現在の水準を含め、この地域において、約10万人の前方展開軍事要員からなる現在の兵力構成を維持する必要があること
B 日本が日米安保条約に基づく施設・区域の提供ならびに接受国支援などを通じ適切な寄与を継続すること
 
(3)  また、この共同宣言では、日米同盟関係の信頼性を高める上での重要な柱となる次のような日米防衛協力の具体的施策を整理して述べている。
@ 国際情勢についての情報や意見交換の強化とこれを踏まえた防衛政策及び軍事態勢についての協議
A 「日米防衛協力のための指針」の見直し及び我が国周辺地域において発生し得る事態で我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合における協力の研究
B 日米物品役務相互提供協定に基づく協力
C 技術・装備分野の相互交流
D 現在進行中の弾道ミサイル防衛に関する研究における協力
 
 また、日米両国が、確固たる日米安保関係を基礎に、この地域や地球規模での幅広い協力を行うことをうたっている。
 我が国としては、今後とも、この共同宣言や防衛大綱の趣旨を踏まえ、日米安保体制の信頼性を一層向上させるため、上述の施策を始めとして、具体的な施策の検討や実施に努めていくことが重要である。
防衛白書1997