防衛庁・自衛隊

第3章 我が国の防衛政策

第1節 我が国防衛の基本的考え方
 
1 我が国の安全保障
 
 我が国の今日の繁栄は、国民の叡知と努力の賜物であるが、その背景には、自由主義国家の一員として、戦後半世紀近くにわたり、外国からの侵略を受けることもなく、国の安全が保たれてきたことがある。
 我が国の安全と繁栄は世界の安全と繁栄と切り離すことはできない。他方、今日の国際社会においては、国連の活動を始めとして、より安定した国際秩序の確立を目指してさまざまな努力が続けられているが、侵略のおそれの全くない真に平和な安全保障環境の確立には至っていないのが現実である。
 平和や安全を得るためには、国際社会の現状に照らし、我が国の環境に則して適切な手段を講ずることが必要である。その手段としては、国際政治の安定を確保するための外交努力、内政の安定による安全保障基盤の確立、自らの防衛努力及び日米安保体制の堅持がある。
 外交や内政の分野の努力のみでは、外国からの実力をもってする侵略を必ずしも未然に防止することはできず、また、万一侵略を受けた場合に、これを排除することもできない。
 このため、我が国は、その安全を担保すべく、自ら適切な規模保体制を堅持し、その信頼性を向上させて隙のない防衛態勢を構築することにより侵略を未然に防止し、万一侵略を受けた場合にはこれを排除することとしている。このような努力は、我が国の安全を確保する上での必須の要件であるのみならず、アジアひいては世界の平和と安全にも資することとなる。
 
2 憲法と自衛権
 
 我が国は、第二次世界大戦後、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう決意し、ひたすら平和国家の建設を目指して努力を重ねてきた。恒久の平和は、日本国民の念願であり、この平和主義の理想を掲げる日本国憲法は、第9条に戦争放棄、戦力不保持及び交戦権の否認に関する規定を置いている。我が国が独立国である以上、この規定が主権国家としての我が国固有の自衛権を否定するものではないことは、異論なく認められている。
 政府は、このように我が国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏付ける自衛のための最小限度の実力を保持することは、憲法上認められていると解している。このような考えの下に、政府は、専守防衛を我が国防衛の基本的な方針として、実力組織としての自衛隊を保持し、その整備を推進し、運用を図っており、これらは憲法上何ら問題がない。
 
3 防衛政策の基本
 
 我が国の防衛政策の基本となっている「国防の基本方針」を受けて、これまで、我が国は、平和憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきている。
防衛白書1997