防衛庁・自衛隊(特殊文字使用)

第2章 より安定した安全保障環境の構築への我が国の貢献

第2節 国際平和協力業務など
 
1 国際平和協力業務
 
 1992年(平成4年)6月の「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(国際平和協力法)の成立後、自衛隊は、国連平和維持活動や人道的な国際救援活動に参加しており、昨年2月からは、ゴラン高原に国連平和維持活動を行う部隊などを派遣している。
 
(1)自衛隊参加の仕組み

 国連平和維持活動は、国連決議に基づき、武力紛争当事者間の停戦合意の遵守の確保など、紛争に対処して国際の平和と安定を維持するため、国連の統括の下に行われる活動である。人道的な国際救援活動は、国連決議又は国際機関の要請に基づき、紛争による被災民の救援や被害の復旧のため、人道的精神により各国が実施するものである。
 国際平和協力法は、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動に対し適切かつ迅速な救援を行うための国内体制を整備することにより、人的な面を中心に、より、積極的に国際平和のための努力に寄与することを目的としている。
 自衛隊の部隊などによる、いわゆる平和維持隊本体業務については、国際平和協力法の国会審議の過程で、別途法律で定める日までの間は、これを実施しないこととされた(いわゆる凍結)。このため、自衛隊の部隊としては当面、平和維持隊の後方支援業務及び人道的な国際救援活動への協力を行うこととなっている。
 
(2)国際平和協力業務の在り方の見直し
 
 政府は、一昨年8月、本法律の附則に基づき、その実施のあり方について見直しを開始した。この見直しでは、要員の安全確保や業務の円滑な実施のため、これまでの教訓・反省事項を含め、様々な観点から、検討を行っている。これらの作業状況は、昨年9月、橋本総理に対して報告され、引き続き、現在、個人の判断によるものとされている武器使用について、憲法上の問題を生じない範囲内で、原則として現場にある上官の命令によるものとすることなどの検討を行っている。
 防衛庁としても、上記報告や自衛隊の部隊等の派遣の経験を踏まえつつ、関係省庁とともに検討を重ねているところである。
 
(3)自衛隊の実施する国際平和協力業務に関する議論
 
 自衛隊の実施する国際平和協力業務に関しては、次のような議論がある。
 
@ 国際平和協力業務の自衛隊法における任務の取扱い(いわゆる本来任務化)
 
A 国連平和維持活動参加に関する組織の在り方
 
 自衛隊とは別の組織を設置して参加すべきとの議論(いわゆるPKO別組織論)については、軍事組織に属する者の派遣が求められていることなどから、防衛庁としては、別の組織を設置する必要はないと考えている。
 
(4)ゴラン高原での活動
 
 我が国の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)への参加は、停戦に合意した主権国家の間に設定された兵力引き離し地域に展開している国連平和維持活動への初の参画であり、また、中等和平のための国際的努力に対する、我が国の人的な意義を有するものである。
 UNDOFは、シリア南西部のゴラン高原におけるイスラエルとシリア間の停戦監視及び両軍の兵力引き離しなどに関する合意の履行状況の監視を任務としている。UNDOFは、74年(昭和49年)に両国間で締結された兵力引き離し協定を受けて、国連安全保障理事会において採択された決議により設立され、現在に至るまで焼く23年にわたり活動を継続している。
 昨年2月より、自衛隊は3次にわたるゴラン高原派遣輸送隊及び司令部要員を国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)の一員として派遣し、ゴラン高原において国際平和協力業務に従事している。
 
2 国際緊急援助活動
 
 国際緊急援助隊法に基づき、自衛隊は、海外、特に開発途上地域において大規模な震災が発生した場合に、被災国政府や国連など国際機関からの要請に対応できる体制を常日頃から保持している。
 
@ 陸上自衛隊は、医療活動、空輸活動、給水活動及びこれらを組み合わせた活動について、それぞれ自己完結的に実施できるよう、各方面隊が四半期ごとに持ち回りで任務に対応できる体制を保持している。
 
A 海上及び航空自衛隊は、国際緊急援助活動を実施する部隊や同部隊への補給品などの海上及び航空輸送を実施できるよう、自衛艦隊、各地方隊、航空支援集団などが任務に対応できる態勢を保持している。
 
 なお、援助活動などを実施する部隊の規模については、保持している態勢の範囲内において、被災国政府や国際機関からの要請内容、被災地域の状況などを踏まえ、外務省との協議によりその都度判断することになる。
防衛白書1997