防衛庁・自衛隊(特殊文字使用)

第1章 国際軍事情勢

第2節 欧米諸国及びロシアの国防政策
 
 欧米主要国及びロシアは、軍事上の再編・合理化を進めるとともに、それぞれを取り巻く戦略環境などを考慮しつつ、地域紛争など多様な事態への対応能力を確保するため、積極的な努力を行っている。
 
@ 米国は、本年5月の国家安全保障戦略においても、これまでと同様に、効果的な外交や十分な軍事力による安全の向上、経済的繁栄の支援、民主主義の推進を主要な目標として、グローバルにリーダーシップを行使する関与戦略を採ることを表明している。他方で、関与にあたっては、国益に対する貢献度を勘案し、また、コスト負担に対する国民の理解を得ることが必要であるとしている。
 また、米国防省が、本年5月、議会に報告したQDR(4年ごとの防衛計画の見直し)によれば、米軍は、引き続き、ほぼ同時に発生する二つの大規模な戦域戦争に対処し得る必要があるとして2003年における戦力構造を決定し、また、前方展開戦力については、欧州及びアジア太平洋地域において、それぞれ約10万人の水準を維持することとしている。
 
A ロシアは、「ロシア連邦軍事ドクトリンの主要規定」などに基づき、軍の再編過程にあるが、総じて国内経済の低迷により必要な予算が配分されていないことなどから、遅れが指摘されており、一昨年8月に軍施設の終了期限を変更したほか、現在、新しい「軍事ドクトリン」の策定作業も開始したとされている。
 ロシア国内の不安定かつ流動的な政治・経済情勢とあいまって、ロシア軍の将来像は必ずしも明確ではなく、ロシア軍の今後の動向については引き続き注意深く見極めていくことが必要である。
 
B 欧州諸国においては、冷戦終結後の戦略環境の変化を受けて、状況に応じ必要な場合には戦力を再び拡大し得る体制の確保に配慮しつつ、戦力の再編・合理化を進めている。また、国連平和維持活動、IFORやSFORへの参加により、国際的な平和の維持・管理のための活動を積極的に進めている。
防衛白書1997