資料9 平成3年度以降の防衛計画の基本的考え方について

平成2年12月19日 安全保障会議決定

平成2年12月19日 閣議決定

 (防衛の基本方針)

1 我が国は、平和憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本埋念に従い、日米安全保障体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきたところである。

 (「防衛計画の大綱」)

2 かかる基本方針の下、昭和51年、安定化のための努力が続けられている国際情勢や国内諸情勢などに着目して、我が国が保有すべき防衛力の具体的な目標を示す「防衛計画の大綱」(昭和51年10月29日国防会議及び閣議決定)を策定した。

  この「防衛計画の大綱」は、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼とし、これをもって平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標とするものであり、我が国は、昭和52年度以降、この指針に従って防衛力の整備を進めてきたところである。

 (国際情勢の認識)

3 最近の国際社会においては、国際関係の多元化が進む一方で、国家間の相互依存関係が一層進展し、また、国家関係におけるイデオロギーや体制の相違の持つ意味合いが相対的に低下しつつある。

  このような中で、「防衛計画の大綱」策定当時において米ソ両国の関係を中心に各種の対立要因が根強く存在していた東西関係は、対話と協調の時代に移行しつつあり、特に、欧州においては、東欧において民社化が進み、また、東西両ドイツの統一が達成され、更には、欧州における新たな安全保障の枠組みの構築が模索されつつある。このような東西関係の変化に伴い、国際社会の安定化に向けて、軍備管理・軍縮を始めとする各般の努力が継続されている。

  他方、新たな国際秩序の構築への動きは見られるものの、国際社会は、依然として宗教上の対立や民族問題、領土問題、ナショナリズム等に起因する地域紛争などの不安定要因を内包している。

  アジア・太平洋地域の情勢は、欧州と比較してより複雑ではあるものの、この地域でも米ソ関係の変化の影響も受けつつ、緊張緩和の方向に向かっての積極的な動きが見え始めている。朝鮮半島をめぐる情勢は、依然として流動的であるが、韓ソ国交樹立といった新たな動きも見られる。また、米国、ソ連、中国及び我が国の間の関係が、この地域の平和と安定にとり一層重要となりつつある。一方、これまで質量両面にわたり一貫して増強されてきた極東ソ連軍の動向については、質的向上は依然として続いているものの、量的には削減傾向がみられる。

  以上のように国際情勢は総じて好ましい方向に変化しつつあり、また、核相互抑止を含む軍事均衡や各般の国際関係安定化の努力により、東西間の全面的軍事衝突又はこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が生起する可能性は、さらに少なくなっているものと見込まれる。また、我が国周辺においては、この地域の平和と安定のため日米安全保障体制の存在が依然として重要な役割を果たしている。

 (今後の防衛力整備)

4 3で述べたような国際情勢の動向については今後とも注視する必要があるが、総じて「防衛計画の大綱」策定の際に前提とした国際関係安定化の流れがより進んだ形で現れつつあるとみることができる。かかる状況を踏まえれば、上記1の基本方針の下で、日米安全保障体制の信頼性の向上を図りつつ、引き続き「防衛計画の大綱」の基本的な考え方に従って効率的で節度ある防衛力の整備に努めることが適切であり、かかる努力が我が国に対する侵略の未然防止に大きな役割を果たすとともに、我が国周辺地域の平和と安定の維持に貢献することとなるものと考える。

 

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