資料48 SDI研究計画に関する内閣官房長官談話

(昭和61年9月9日)

1 我が国は、平和国家としての立場から、核兵器の大幅な削減を通じて、より安定した東西関係がもたらされ、ひいては、核兵器の究極的廃絶が実現されることを強く希求している。

2 米国の戦略防衛構想(SDI)については、政府としては、昨年初頭、本構想が非核の防御システムによって弾道ミサイルを無力化することにより究極的には核兵器の廃絶を目指すものであるとのレーガン大統領の説明を受け、かかるものとして、我が国は、本件研究計画に対する理解を表明してきた。その後、米国政府からこの研究計画に対する参加招請を受け、これまで我が国としての対応振りにつき慎重に検討を続けてきた。

  この間、昨年5月のボンにおける日米首脳会談において、中曽根総理は、本構想に関して、(1)ソ連に対する米国の一方的優位を追求するものではない、(2)西側全体の抑止力の一部としてその維持・強化に資する、(3)攻撃核兵器の大幅削減を目指す、(4)ABM条約に違反しない、及び(5)開発・配備については同盟国との協議、ソ連との交渉が先行すべきである、との諸点を確認した。

3 米側からは、その後も種々の機会に、本構想は、米国が将来、戦略防衛システムの開発、配備の可否を決定するに当たって必要な技術的知識を提供するための研究計画であり、本構想の基本的考え方は、軍備管理・軍縮交渉努力と並行しつつ、非核による高度な防衛システムについて研究を進め、究極的には核兵器を廃絶しようというものであるとの説明を一貫して受けている。米国がこのような基本的理念の下で研究を行っていくことは、前記1の我が国の平和国家としての立場に合致するものと考える。

4 米国がかかる構想の下での研究を進め、非核の防御システムに関する技術が一層発展することは、米国のみならず我が国を含む西側全体の抑止力の強化に資する可能性を有するものであると考える。また、我が国が同研究計画に参加することは、日米安保条約に基づく日米間の相互協力の発展にもつながるので、日米安保体制の効果的運用に資するものと考える。

5 また、本構想は、関連技術の実現性を探究するための多数の研究プロジェクトを同時かつ大規模に実施するものであり、我が国が当該研究計画に参加する場合に、我が国が適切な形でその成果を利用し得ることとなれば、我が国の関連技術水準の向上に大きな影響を及ぼす可能性があるものと考える。

6 我が国からのSDI研究計画への参加は、米国が策定する個々の具体的プロジェクトの特定の局面への参加となるものと考えられるところ、政府としては、前述のごとき我が国のSDI研究計画への参加の意義にかんがみ、本件参加問題については、現行の我が国国内法及び日米間の取極の枠組の中で処理することが適当であり、従来からの防衛分野における米国との技術交流と同様に取り扱うとの立場に立って、かかる参加を円滑なものとするため、所要の具体的諸措置につき米国政府と協議することとした。

7 なお、宇宙の開発及び利用に関する国会決議との関係について見れば、国会決議の有権的解釈は、もとより国会において行われるべきものであるが、政府としては、SD1研究計画へのかかる我が国の参加は、本件国会決議に触れるものではないと理解している。

 

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