資料11 海上防衛力整備の前提となる海上作戦の地理的範囲について

昭和59年4月10日参議院予算委員会で

政府が明らかにした会見

我が国は、周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね干海里程度の海域において、有事の際、我が国の海上交通の安全を確保し得ることを目標に、海上防衛力を整備している。このような海上作戦の地理的範囲についての考え方は、「第3次防衛力整備計画」(大綱 41.11.29国防会議及び閣議決定、主要項目 42.3.13国防会議決定 42.3.14閣議決定)、「第4次防衛カ整備5カ年計画」(大綱 47.2.7国防会議決定、47.2.8閣議決定、主要項目47.10.9国防会議及び閣議決定)以来とってきたものである。

なお、上記のおおむね千海里程度の海域については、その全域にわたって防衛するという考え方をとっているものではない。

(1) 国防会議で決定された「第3次防衛力整備計画」、「第4次防衛力整備5か年計画」の本文には、地理的範囲に関する具体的記述はないが、それぞれの計画期間内の整備量は、次のとおり、上記の海上作戦の地理的範囲を念頭におきつつ決定されているものである。

すなわち、「第3次防衛力整備計画」、「第4次防衛力整備5か年計画」においては、海上自衛隊の保有すべき防衛能力を、我が国土から比較的近い海域で行われる防衛作戦に関する能力と外洋で行われる船舶の援護作戦等に関する能力とに分け、前者を「周辺海域の防衛能力」、後者を「海上交通の安全確保能力」と規定している。

その場合において、能力算定の前提となる作戦の地理的範囲に関しては、計画策定段階において、「周辺海域の防衛能力」については周辺数百海里の海域、「海上交通の安全確保能力」についてはおおむね千海里程度の海域を目標とするという防衛庁の説明を踏まえ、政府部内の諸調整を行い、海上防衛力の整備を行った。

(2) 国防会議で決定された「防衛計画の大綱」(51.10.29国防会議及び閣議決定)の本文にも、地理的範囲に関する具体的記述はないが、別表に定める陸上対潜機部隊の数及び作戦用航空機の機数のうち、固定翼対潜機に係る部隊の数及び機数は、次のとおり、上記の海上作戦の地理的範囲を踏まえて決定されているものである。

すなわち、「防衛計画の大綱」においては、我が国が保有すべき海上防衛力の目標規模を別表で示すとともに、その規模算出の前提とした海上自衛隊の4つの体制について、具体的に規定している。同規定のうち、「周辺海域の監視哨戒」及び「海上護衛等」の任務に当たり得る固定翼対潜機部隊の目標規模は、任務を行う海域に応じて算定されている。

その場合において、固定翼対潜機に係る部隊の数及び機数の算定の前提となる任務の地理的範囲に関しては、計画策定段階において、「周辺海域の監視哨戒」については周辺数百海里の海域、航路帯を設ける場合の「海上護衛等」についてはおおむね千海里程度の海域とする考え方を前提としているという防衛庁の説明を踏まえ、政府部内の諸調整を行なったほか、「防衛計画の大綱」が審議された国防会議の場においても、同趣旨を説明し、了承を得ている。

(3) 防衛力整備についての以上の考え方は、国会における質疑に対する政府側の答弁や議員の質問主意書に対する政府の答弁書(閣議決定)において、繰り返し明らかにしてきているところである。

なお、「周辺海域」という用語については、その後昭和53年に決定された「日米防衛協力のための指針」(53.11.28国防会議及び閣議において報告、了承)において、「周辺海域」の範囲を、日米が共同して作戦を行う海域という観点から、航路帯を設ける場合のおおむね千海里程度の海域をも含むより広い概念で使用しているが、これは運用上の観点に立ったものである。

 

戻る