第2部

わが国の防衛政策

第1章 わが国の安全保障と防衛力

第1節 安全保障

1 侵略等の態様

 わが国の安全を脅かす侵略等の態様としては、そのときの国際情勢等により様々なものが考えられるが、これを一般的にみた場合、「防衛計画の大綱」(第2章第2節参照)にもあるように、直接侵略(限定的かつ小規模なものから、これを超えるものまであろう)、間接侵略(一般に外国の教唆または干渉によって引き起こされた大規模な内乱及び騒じょうをいう)及び軍事力をもってする不法行為(わが国近傍海域にあるわが国の船舶に対して行われる軍事力をもってする示威、恫喝、臨検、だ捕、あるいは隠密的な破壊活動(非公然武力行使)等のほか領海侵犯等)等が考えられる

2 侵略等に対する安全保障

 我々は、国民一人一人が個人として尊重され、多様な意識や価値観を持ち、それぞれの好むところに従い、多彩な活動を行い得る国家体制、すなわち、個人の最大限の自由の保障に高い価値を置く民主主義を基調とする国家体制の下で生活している。これは、わが国が国民の意思に基づき、人権を保障し、社会秩序を維持するとともに、国際社会の平和と安定や自由貿易体制を維持するための努力を行ってきたからこそ、可能となったものであって、このことと、我々が世界でも有数の活力ある豊かな社会を築きあげることができたこととは、決して無関係ではない。

 万一にも侵略等が生起し、わが国の平和が損なわれ、独立が侵されるようなことがあれば、もはや自由と繁栄を追求することはおろか、国民の安全を確保することすら困難となるであろう。

 国の安全を保つためには、国を守る気概の充実と活力ある豊かな社会の維持とともに、次の3つの面での努力を整合性をもって推進することが必要である。

 まず、平和な国際環境の実現に努めることが必要である。わが国は、自由主義諸国を始めとする諸外国との連帯と協調を図り、国連の平和と安全の確保のための諸活動に対する協力を一層強化しつつ、世界の各地における紛争、対立の解決・緩和のための外交努力や経済協力などを通じて、世界の政治的安定や経済的発展に貢献する必要がある。また、国際社会の平和と安定が力の均衡によって支えられているという現状を踏まえ、力の均衡を維持しつつ、その均衡の水準をできるだけ引き下げるようたゆまざる軍縮努力を行う必要がある。

 次に、自ら適切な防衛力を保持することにより、侵略等を抑止するとともに、万一侵略等が生起した場合には、これに対処できるように自助の努力をすることが必要である。

 さらに、日米安全保障体制を堅持し、その円滑かつ効果的な運用に努めることが必要である。

3 自由主義諸国の一員としての日本

 自由主義諸国は、自由と民主主義という価値観を共有し、第2次世界大戦後、力を合わせて世界の平和と安定の維持及び自由貿易体制の堅持等に努めてきた。わが国はこの枠組みの下でめざましい経済発展を遂げ、今日では、わが国のGNPが世界の1/10程度に達するなど、わが国の動向が世界の諸情勢に大きな影響を及ぼす存在となってきている。わが国としては、自由主義諸国の一員としてその責任を十分自覚し、国際社会においてその地位にふさわしい役割を果たしていくことが求められているといえよう。

 自由主義諸国の相互依存関係は、一国の安全が必然的に他国にも直接重大な影響を及ぼし得るほどに深まっている。東西間の力の均衡の維持が国際的な武力紛争を防止し、国際平和を維持する上で重要であるという現実を考えれば、世界の軍事情勢が厳しさを増し、自由主義諸国が国防に努力を傾注している中にあって、わが国が憲法及び基本的な防衛政策に従い防衛力の向上に努めることは、日米安全保障体制の信頼性の維持強化にもつながり、結果的に東西の軍事バランス面において自由主義諸国の安全保障の維持に寄与し、アジアひいては世界の平和と安全に貢献するものである。

4 国を守る気概

 今日、わが国は自由と民主主義を基本理念とする先進自由主義諸国の一つであり、日本国民は、独特の文化を持ち、美しい国土に自由で平和な生活を営んでいる。愛国心は、このようなわが国土への愛着であり、我々の生活共同体が平和のうちに発展することを願う人間自然の情であり、だれしもが持っている心情である。大切なことは、それをどういうときに、どのように発揮するかである。侵略からわが国を守るため、最善の努力を尽くすことは、国民一人一人の努めであり、その努めを果たそうとする自覚が愛国心の発露であり、国を守る気概である。

 有事に備えてわが国が防衛力を整備しているのは、そのような国を守る気概を前提としている。それに支えられたとき、初めて自衛隊は真に国を守る力となり得るものであり、このための各分野における啓発に関する配慮も必要であろう。

5 防衛関連諸施策

(1) 民間防衛

 わが国に対して万一侵略があった場合、国民の生命・財産を保護し、被害を最小限にとどめる上で、国民の防災及び救護・避難のため、政府・地方自治体及び国民が一体となって、民間防衛体制を確立することが必要である。このような民間防衛に関する努力は、また、国民の強い防衛意志の表明でもあり、侵略の抑止につながり、国の安全を確保するため重要な意義を有するものである。

 欧州諸国などでは、第2次世界大戦において、市民の死傷率が軍人のそれを上回ったという事実にかんがみ、もしも将来、他国から武力攻撃が加えられた場合、これらの被害に対する対策が講じられなければ、市民にばく大な数の犠牲者が出るであろうとの予想に基づいて、民間防衛に関する努力を行ってきている。これらの諸国では、いずれも担当する政府機関の設置、関連する法律の制定、組織づくり、退避所の建設など民間防衛体制の整備に努力している。また、これらの諸国では、中央政府及び地方自治体の計画・指導の下に、いざという場合に、国民それぞれが自らの生命や家庭を守るとともに、負傷者の救護、公共の諸施設の復旧などを行って、社会秩序を維持・回復することができるよう、平素から退避訓練などの民間防衛に関する諸活動を実施している。これらの諸活動は、結果的に、平時突発する自然災害などに対処する上で有効なものとなっている。

 わが国においては、現在のところ、民間防衛に関してはみるべきものがない。今後、国民のコンセンサスを得つつ、政府全体で広い観点から慎重に検討していくべきであろう。

(2) 国民生活を維持するための施策

 わが国にとって、国民生活を維持するためには、資源・エネルギー、食糧などの確保が不可欠である。これらの生産地あるいは輸送経路などにおいて武力紛争又は大規模な天災地変などの事態が起こった場合、あるいはわが国の有事において海上交通が妨害される場合などに予想される資源・エネルギー、食糧などの供給の停止などに対し、わが国が冷静に対処するためには、これらの必要物資を備蓄しておくことが有効であろう。

 さらに、このような施策の推進とあいまって、有事におけるわが国の国民生活、経済活動などを維持するために必要な物資の海上輸送の実施体制のあり方についても、有事において講ずべき緊急措置の一環として、政府全体として総合的な観点から研究する必要があろう。

(3) その他の施策

 防衛力を支え、これを真に有効に発揮させるためには、平時から防衛産業を育成し、建設、運輸、通信、科学技術などの分野において国防上の配慮を加えておく必要があろう。

 スイスなどにおいては、高速道路を臨時の滑走路として使用できるようにしており、有事の際、飛行場が爆撃などによって破壊されても、空軍はこれらを臨時飛行場として利用できるようにしている事例がある。また、各国とも教育の面においても配慮を加えているところである。

6 総合安全保障関係閣僚会議

 一般に、今日の安全保障においては、軍事面の努力もさることながら、非軍事面の努力が極めて重要となっている。平和外交の推進やエネルギー、食糧確保等の諸施策は、いずれも一国の存在のため欠くことのできないものであり、国の安全保障を全うするためには、国際的な協調を図りながら、軍事、非軍事にわたるあらゆる施策が総合的に、かつ、整合性をもって推進されなければならない。

 わが国が、日米安全保障体制を有効に維持し、自衛のために必要な限度において他の施策とのバランスにも留意しつつ引き続き質の高い防衛力の整備を図っているのも、総合的安全保障の一環として、わが国の安全保障を確かなものとするための施策を実施しているものにほかならない。

 わが国においても、最近の国際政治経済情勢の推移を背景として、わが国の安全を確保するためには、総合的な施策の推進が必要であるとの視点に立ち、政府は、昭和55年12月、「経済、外交等の諸施策のうち、安全保障の視点から、総合性及び整合性を確保する上で、関係行政機関において調整を要するものについて協議するため」内閣に総合安全保障関係閣僚会議を設置し、随時協議を実施しているところであり、昨年8月及び本年2月の会合においては最近の東西関係の推移など、さらに本年6月の会合においては主要国首脳会議(ロンドン・サミット)、イラン・イラク紛争の新展開などを踏まえてわが国の総合安全保障にかかわる諸問題を幅広く協議した。

 

(注) なお、平時の軍事力の利用についてみれば、軍事力を背景として政治的影響力を行使することもあろう

第2節 防衛力の意義と役割

1 軍事力の意義

(1) 軍事力

 国の安全が非軍事的手段によって確保されることは望ましいことではあるが、今日の国際社会においては、非軍事的手段だけで国の安全を全うすることは困難である。いかに適切な非軍事的手段を尽くしたとしても、現実に直接侵略が生起した場合に、これを直接に排除し得るのは軍事力である。また、軍事力は、間接侵略や軍事力をもってする不法行為に対処するためにも必要である。さらに、軍事力による政治的威圧や恫喝を受けたとき、それを決然としてはね返すためには、軍事力の保持を含む安全保障体制などを整えておくことが必要である。

 主権国家が分立している今日の世界では、一方で軍備管理・軍縮の努力を絶えず行いつつも、それが直ちに安全を保障するまでに至っていない現実を踏まえ、それぞれの地域において各国が適切な軍事力を保持することにより力の空白地帯を作らないこと、すなわち軍事的均衡が維持されることが、その地域における安定的な国際関係の維持を図る上で極めて重要である。

 このように、軍事力は、国の安全を保障する上で必要不可欠の要素であるといえる。

(2) 核時代における通常戦力の意義

 通常戦力は、米ソの持つ圧倒的な核戦力の前においては、その存在が無意味にみえるかもしれない。しかしながら、核兵器は人類とその文明を破滅させかねない力を持っているため、核兵器の使用及びそれに至る大規模な軍事力の使用は強く抑止されている反面、通常戦力による限定的な紛争に対しては、核の抑止力だけではこのような紛争を抑止することは困難となっている。このような現実に照らし、各国は、核兵器の保有国であると否とを問わず、通常戦力による紛争等を抑止し、また、必要な場合これに対処するために、通常戦力の整備に努力しているのが現状である。

2 わが国の防衛力の意義

 わが国が防衛力を保持することは、その自由と独立、平和と安全及び発展と繁栄を自らの手によって守り、維持するという国民の意志を諸外国に対して具体的に表明するものである。

 わが国の防衛力は、日米安全保障条約に基づく米国の核抑止力を含む軍事力の存在とあいまって、あらゆる脅威に対処し得る態勢を構成することにより、相手国に侵略意図を放棄させ、侵略を未然に防止する役割を果たしている。また、万一侵略が生起した場合には、限定的かつ小規模な侵略に対しては原則として独力で排除することとし、侵略の規模、態様などにより独力での排除が困難な場合には米国と協力してこれを排除する役割を果たすものである。

 また、わが国がこのような防衛態勢を保持していることが、わが国周辺の国際政治の安定の維持に貢献することともなっているといえよう。

 さらに、わが国の防衛力は、軍事力を背景とする他国の政治的・外交的威圧や脅迫を抑止し、万一そのような事態が生起した場合には、これに屈しない備えともなるものであるとともに、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては治安を維持することができない場合、これを補完して治安維持の機能をも果たし得るものである。

 加えて、わが国の防衛力は、天災地変その他の災害の発生などに際して、その組織、装備、能力などをいかして人命、財産、国民生活の保護を図るなど民生の安定にも寄与している。

3 陸・海・空各自衛隊の防衛力の役割

 陸・海・空各自衛隊の防衛力の役割を考えるに当たっては、次に述べるわが国の特性を考慮する必要がある。

 第1は、わが国の地理的特性である。わが国は、北東アジアに位置し、大陸に近接する細長い弧状の列島であり、四面環海の島国であることから、わが国に対する直接侵略は必ず海又は空を経由して行われ、また、わが国と遠く大洋を隔てた米国からの来援も必ず海又は空を経由して行われる。

 第2は、わが国の社会的・経済的特性である。わが国は、狭い国土に多くの人口を抱え、政治・経済中枢も特定地域に集中しており、また、資源・エネルギーなどの海外依存度が高い。このため、わが国は、国土への攻撃に対してぜい弱であることから、侵略の未然防止に努めるのはもとより、侵略が行われた場合も極力わが国土において戦闘が行われないよう努める必要がある。また、わが国の生存と繁栄を維持するため、海上交通の安全確保に努めることが極めて重要である。

 第3は、わが国が専守防衛を旨としていることである。このため、侵略国は、兵力、時期、場所及び態様を自由に選択してわが国を攻撃できるのに対し、わが国は、待ち受けの態勢によって対処することとなる。

(1) 陸上防衛力

ア 一般に、陸上戦力は、有史以来領土をめぐる攻防戦に決着をつける最終的な力として存在してきた。侵略国は、最終的には陸上部隊を送り込むことによって、国土を占領し、相手国の国民やその意志を支配しようとし、これに対し、侵略された国は、この侵攻部隊を最終的には陸上部隊をもって国土から排除しなければならないという点において、陸上戦力の果たす決定的役割は、近代戦においても変わっていない。このような陸上戦力を保持することは、たとえ国土が戦場となっても国を守ろうとする国民の強い防衛意志を内外に表明するものであり、世界各国ともこの戦力を国土防衛の最後の拠りどころとして位置づけている。

イ わが国が、陸上防衛力を保持することは、侵略国に対し、わが国の陸上防衛力を撃破し得るに足る陸上戦力を海又は空を経由して送り込むという大きな覚悟と決心を強いることになり、わが国に対する侵略を強く抑止することとなる。

  万一、わが国に対して現実に侵略が生起した場合には、わが国は、着上陸してくる侵攻部隊をできるだけ洋上において阻止し、国土に戦闘が及ぶのを最小限にするように努めることとしている。しかしながら、侵攻部隊がわが国土に着上陸した事態には、わが地形を味方として利用でき、国土を直接確保できる陸上防衛力を主体として対処することとなる。

わが国の防衛の構想は、限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除することとしており、また、侵略の規模、態様等により独力で排除することが困難な場合にも有効な抵抗を継続して、米国からの協力をまってこれを排除することとしているが、来援する米陸上部隊の移動には日時を要することなどの理由から、その来援を可能にするためにも、陸上防衛力を主体として組織的な戦闘を継続する必要がある。

さらに、陸上防衛力は、間接侵略への対処に当たるとともに、必要に応じ公共の秩序を維持し、海・空各自衛隊の作戦の後拠を確保する等、国内全域にわたる防衛警備を担当することとなる。

(2) 海上防衛力

ア 一般に、海上戦力の特性は、海上を速やかに移動し、長期にわたって種々の作戦行動がとれるという優れた機動性と海上を自由に行動できるとともに相手の出方によって種々の行動を選択できるという運用の柔軟性とにある。この特性をいかし、一般に、海上戦力の任務は、平時においては警戒監視、プレゼンスによる影響力の行使、情勢緊迫時における各種事態への対応などであり、有事においては敵海上戦力の撃破、海上交通の保護などであって、主要国海軍はこのような幅広い任務を遂行する能力を持っている。

イ わが国の海上防衛力は、海上からの侵攻部隊を陸上防衛力及び航空防衛力と協同して、極力洋上において阻止し、又は撃破するとともに、着上陸された後は、敵の増援又は後方補給路を遮断する役割を有している。

  また、わが国の資源・エネルギーなどの海外依存度の高さを考慮すれば、わが国に対して侵略等を行おうとする国にとっては、わが国の海上交通の妨害ないし破壊は、その有効な手段の一つであると考えられる。このため、わが国の海上防衛力は、わが国の海上交通の安全確保の任務を有している。

(3) 航空防衛力

ア 一般に、航空戦力の特性は、航空機に代表されるように、優れた速度、行動範囲、機動力及び強大な突破打撃力をもって、攻撃・防御の両面にわたって重要な役割を果たし得ることである。

イ わが国に対する侵攻は、わが国の地理的特性及び近代戦の様相から、航空戦力の投入をもって開始される可能性が大きいと考えられ、特に、わが国が専守防衛という防衛戦略をとっていることも考慮すれば、短時間に行われる航空侵攻に対処するためには、即応性の高い航空防衛力が必要不可欠である。

  敵の侵攻に際し、航空優勢を確保することは、わが国の政経中枢等への航空攻撃を阻止し、その安全を図る上で極めて重要である。また、航空作戦の成否は、以後の全般の戦勢を左右する大きな要素の一つであり、陸上・海上における作戦を遂行する上でも、航空優勢の確保が重要となる。

したがって、航空侵攻に対しては、航空防衛力を主体に防空作戦を実施し、侵攻する航空戦力をできる限りわが国の領域外において撃破し、わが国領域及び周辺空域における航空優勢を確保することが必要である。また、航空防衛力は、海又は空を経由する侵攻部隊に対し、陸上防衛力及び海上防衛力と協同して洋上においてこれを撃破し、着上陸された後は、陸上防衛力に協力してこれを撃破する。わが国の海上交通保護に当たっては、海上防衛力に協力して、可能な範囲において、周辺空域における防空を行うこととなる。

さらに、航空防衛力は、平時において、領空侵犯に対処する役割を保持している。

第2章 防衛政策

第1節 防衛政策の基本

1 憲法と自衛権

(1) わが国は、第2次世界大戦後、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう決意し、ひたすら平和国家の建設を目指して努力を重ねてきた。恒久の平和は、日本国民の念願であり、この平和主義の理想を掲げる日本国憲法は、第9条に戦争放棄、戦力不保持及び交戦権の否認に関する規定を置いている。

(2) もとより、わが国が独立国である以上、この規定が主権国家としてのわが国固有の自衛権を否定するものでないことは、異論なく認められている。政府は、このようにわが国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法上禁止されているものではないと解しており、専守防衛をわが国防衛の基本的な方針として、実力組織としての自衛隊を保持し、その整備を推進し、運用を図ってきた。

この専守防衛という言葉については確定した定義がある訳ではないが、これは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その防衛力行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限られるなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものである。

(3) 憲法の諸規定のうち、戦争の放棄などを定めた第9条の趣旨についての政府の見解は、次のとおりである。

ア わが国が憲法上の制約の下において保持を許される自衛力は、自衛のための必要最小限度のものでなければならない。

自衛のための必要最小限度の実力の具体的な限度については、そのときどきの国際情勢、軍事技術の水準、その他の諸条件により変わり得る相対的な面を有することは否定し得ないが、性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器、例えば、ICBM、長距離戦略爆撃機などはこれを保持することは許されない。

イ 次に自衛権の発動については、いわゆる自衛権発動の三要件、すなわち、わが国に対する急迫不正の侵害があること、この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと及び必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの三要件に該当する場合に限られる。

ウ わが国が自衛権の行使としてわが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使できる地理的範囲は、必ずしもわが国の領土、領海、領空に限られるわけではないが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので、一概にはいえない。しかしながら、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。

エ 国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているものとされている。わが国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であるが、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。

オ なお、憲法第9条第2項は、「国の交戦権はこれを認めない」と規定しているが、わが国は、自衛権の行使に当たっては、既に述べたように、わが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することが当然に認められており、その行使は交戦権の行使とは別のものである。

2 国防の基本方針

 以上に述べた憲法の趣旨に基づいて進められているわが国の防衛政策は、昭和32年5月に国防会議及び閣議で決定された「国防の基本方針」にその基礎を置いている。

 この「国防の基本方針」は、まず、国際協調等平和への努力の推進及び民生安定等による安全保障基盤の確立を、次いで効率的な防衛力を漸進的に整備すること及び日米安全保障条約に基づく日米安全保障体制を基調とすることを基本方針として掲げている(日米安全保障条約については資料12参照)。

3 非核三原則

 わが国は、核兵器については、「持たず、造らず、持ち込ませず」の非核三原則を国是として堅持している。

 核兵器の製造・保有は、原子力基本法の規定の上からも禁止されているところであるが、さらに、わが国は、昭和51年6月核兵器の不拡散に関する条約を批准し、非核兵器国として核兵器を製造しない、取得しないなどの義務を負っている。

4 シビリアン・コントロール

 自衛隊は、国民の意思にその存立の基礎を置くものであり、国民の意思によって整備・運用されなければならない。

 自衛隊は、旧憲法下の体制とは全く異なり、厳格なシビリアン・コントロール(文民統制)の下にある。

 シビリアン・コントロールの考え方は、欧米等の民主主義国では早くから根強く保持されており、各国の歴史と伝統の中にはぐくまれ、それぞれの制度と運用の実績を持っている。したがって、シビリアン・コントロールの実態を画一的なものとしてとらえることはできないが、現在の欧米等の民主主義国では、シビリアン・コントロールとは、民主主義政治を前提としての、軍事に対する政治優先又は軍事力に対する民主主義的な政治統制を指すといわれている。

 一般的に、軍事力は、本来、国の平和と安全を保障するための重要な手段であるが、その強大な実力の運用を誤れば、逆に大きな不幸を招くおそれを持っている。そのため、欧米等の民主主義国において、このような実力集団を政治が支配・統制するための原理として、シビリアン・コントロールという考え方が重要視されるようになったものである。

 わが国の場合は、終戦までの経緯に対する反省もあり、他の民主主義諸国と同様、厳格なシビリアン・コントロールの諸制度を採用した。

 まず、自衛隊は、国民の代表たる国会によって、そのコントロールを受けている。自衛隊の定員、組織、予算等の重要な事項は国会で議決され、防衛出動については国会の承認が必要とされていること等のほか、自衛隊の諸問題に関しては絶えず国会で審議されている。

 次に、内閣は、国会に提出する法律案や予算案を決定し、政令を制定し、あるいは、防衛にかかわる重要な方針や計画を決定している。この内閣を構成する内閣総理大臣その他の国務大臣は、憲法上文民でなければならないことになっている。内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有しており、自衛隊の隊務を統括する防衛庁長官も、文民である国務大臣をもって充てられる。

 内閣には、国防に関する重要事項を審議する機関として国防会議が置かれている。国防会議は、内閣総理大臣を議長とし、防衛庁長官、外務大臣、大蔵大臣、経済企画庁長官等を議員として構成され、防衛計画の大綱、防衛出動の可否等、基本的な問題のほか、随時、国防に関する重要事項を審議する。

 さらに、防衛庁では、防衛庁長官が自衛隊を管理し、運営するに当たり、政務次官及び事務次官が長官を助けるのはもとより、基本的方針の策定については、いわゆる文官の参事官が補佐するものとされている。

 このように、自衛隊を民主的に管理・運営するためのシビリアン・コントロールの制度は、欧米等の民主主義国と同様わが国においても整備されている。

 なお、現代においては、軍事が専門化・高度化する一方、国の安全保障政策における外交、経済等、非軍事分野の重要性・多面性も増大しており、このような点を考慮すると、今日、シビリアン・コントロールの制度を運営するに当たっては、政治が軍事を十分に把握し、これを多面的・総合的な安全保障の中にいかに正しく位置づけるかということが極めて重要になっているといえよう。

 また、シビリアン・コントロールの制度がその実をあげるためには、政治、行政両面における運営上の努力が今後とも必要であることはもとより、国民全体の防衛に対する深い関心と隊員自身のシビリアン・コントロールに関する正しい理解と行動が必要とされるところである。(儀じょう隊を巡閲する内閣総理大臣(高級幹部会同)

第2節 防衛計画の大綱

 防衛力の整備は、装備品の取得や要員の養成に長期間を要し、一朝一夕にできるものではない。したがって、平素から将来のわが国防衛力のあるべき姿を検討しつつ、長期的視野に立って、計画的かつ継続的な努力を行うことが大切である。

 このため、わが国では、「国防の基本方針」に基づき、3年又は5年を対象期間とする防衛力整備計画が4次にわたって策定され、ついで昭和51年の10月には、「防衛計画の大綱」(「大綱」)が国防会議及び閣議において決定された(第2−1表参照)。

 「大綱」は、従来の防衛力整備計画のように一定期間内における整備内容を主体とするものではなく、防衛力の維持及び運用をも含め、わが国の防衛のあり方についての指針を示し、自衛隊の管理及び運営の準拠となるものである。

 「大綱」の内容は、資料10に示すとおりであるが、ここでは防衛の構想、保有すべき防衛力及び防衛力整備実施上の方針の概略について述べる。

1 防衛の構想

(1) 侵略の未然防止

 わが国の防衛は、わが国自ら適切な規模の防衛力を保有し、これを最も効率的に運用し得る態勢を築くとともに、米国との安全保障体制の信頼性の維持及び円滑な運用態勢の整備を図ることにより、いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制を構成し、これによって侵略を未然に防止することを基本とする。

 また、核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存するものとする。

(2) 侵略対処

 間接侵略事態又は侵略につながるおそれのある軍事力をもってする不法行為が発生した場合には、これに即応して行動し、早期に事態を収拾することとする。

 直接侵略事態が発生した場合には、これに即応して行動し、防衛力の総合的、有機的な運用を図ることによって、極力早期にこれを排除することとする。この場合において、限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除することとし、侵略の規模、態様等により、独力での排除が困難な場合にも、あらゆる方法による強じんな抵抗を継続し、米国からの協力をまってこれを排除することとする。

2 保有すべき防衛力

(1) 防衛の態勢

ア 常時十分な警戒態勢をとり得ること。

イ 国外からの支援に基づく騒じょうの激化、国外からの人員、武器の組織的潜搬入などの事態が生起し、又はわが国周辺海空域において非公然武力行使が発生した場合には、これに即応して行動し、適切な措置を講じ得ること。また、わが国の領空に侵入した航空機又は侵入するおそれのある航空機に対し、即時適切な措置を講じ得ること。

ウ 直接侵略事態が発生した場合には、限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で、また、独力排除が困難な場合は、抵抗を継続し米国の協力をまって、これを排除し得ること。

エ 指揮通信、輸送、救難、補給、保守整備などの各分野において、必要な機能を発揮し得ること。

オ 周到な教育訓練を実施し得ること。

カ 国内のどの地域においても、必要に応じて災害救援等の行動を実施し得ること。

(2) 防衛力の量

ア 陸上自衛隊

(ア) わが国の領域のどの方面においても、侵略の当初から組織的な防衛行動を迅速かつ効果的に実施し得る体制を確保するため、わが国の地理的特性等を考慮し、必要となる12個師団及び2個混成団

(イ) これらの師団等を必要に応じて効率的に支援し、補完し、各種機能に欠落を生じないよう、主として機動的に運用する機甲師団、特科団、空挺団、教導団及びヘリコプター団を少なくとも各1個単位

(ウ) 政経中枢地域、交通上の要衝及び防衛上の重要地域の低空域防空に当たる8個高射特科群

(エ) これらの基幹部隊と後方支援分野を整えるのに必要な定員18万人

イ 海上自衛隊

(ア) 海上における侵略等の事態に対応し得るよう機動的に運用する艦艇部隊として、常時少なくとも1個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る体制を確保するため、艦艇の運用面も考慮し、必要となる4個護衛隊群

(イ) わが国沿岸海域の警戒及び防備に当たるため、わが国の地理的特性に応じて、これを5海域に区分し、それぞれに地方隊を置き、各地方隊に常時少なくとも1個隊を可動の態勢で維持するために必要となる対潜水上艦艇部隊10個隊

(ウ) (ア)及び(イ)の部隊に配備するための対潜水上艦艇合わせて約60隻

(エ) 必要とする場合に、主要海峡等の警戒及び防備に充て得るための潜水艦部隊6個隊及びこの部隊に配備するための潜水艦16隻

(オ) 必要とする場合に、重要港湾、主要海峡等に敷設された機雷の除去、処分などに当たるため、東日本海域と西日本海域とにおいて機動的に運用し得るための2個掃海隊群

(カ) 必要とする場合に、重要港湾、主要海峡等の防備に当たる回転翼対潜機部隊と、周辺海域の監視哨戒及び海上護衛等の任務に当たり得る固定翼対潜機部隊とを合わせて陸上対潜機部隊16個隊

(キ) これらの対潜機を中心に作戦用航空機約220機

 なお、シーレーン防衛については、その定義を始めとして様々な論議が行われてきたが、政府は、昭和59年の国会論議を通じて海上防衛力整備の前提となる海上作戦の地理的範囲について見解を明らかにした(資料11参照)。

ウ 航空自衛隊

(ア) わが国周辺のほぼ全空域を常続的に警戒監視できる体制を確保するため、わが国の地理的特性、レーダー覆域などを考慮し、全国28か所に地上固定のレーダーを配備するために必要となる航空警戒管制部隊28個警戒群

(イ) 領空侵犯及び航空侵攻に対して、即時適切な措置を講じ得る態勢を常続的に維持し得る体制を確保するため、わが国の地形、戦闘機の行動半径などを考慮し、必要となる戦闘機部隊13個飛行隊(要撃戦闘機部隊10個飛行隊と着上陸侵攻阻止及び対地支援を本来の任務とする支援戦闘機部隊3個飛行隊とに分けて保有)

(ウ) 政経中枢地域、交通上の要衝及び防衛上の重要地域の高空域防空に当たる6個高射群

(エ) 必要とする場合に、航空偵察に当たる航空偵察部隊1個飛行隊

(オ) 必要とする場合に、地上レーダーの欠点を補完し、航空機の低空侵入に対する早期警戒監視に当たる警戒飛行部隊1個飛行隊

(カ) 必要とする場合に、航空輸送を実施する航空輸送部隊3個飛行隊

(キ) 戦闘機を中心に作戦用航空機約430機

 以上の各自衛隊の規模を昭和59年度の防衛力整備により達成が見込まれている規模と比較すると第2−1表に示すとおりである。

(3) 防衛力の質

 大綱は、防衛力の整備に当たっては、諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう、質的な維持向上に配意する旨定めている。この理由は、技術の進歩とともに、常に向上を続ける脅威の質に見合った防衛力の質を維持しなければ、侵略の未然防止も侵略の排除も不可能となり、そもそも防衛力を保有する目的自体が果たせなくなるからである。

 このため、わが国は、今後とも、憲法の許容する範囲内において、防衛力の質的水準の向上を推進していかなければならない。

 また、そのため、装備品などの整備に当たっては、その適切な国産化につき配意するとともに、技術研究開発態勢の充実に努めることとしている。

3 防衛力整備実施上の方針

 以上のようなわが国が保有すべき防衛力の目標を実現していくに際しての防衛関係経費の規模について、大綱には、そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ行うものとするとの基本的指針が示されている。

 しかし、政府としての総合的な見地から、この大綱とは別に、昭和51年11月、国防会議及び閣議で「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の100分の1に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする」ことが決定されている。

 

 昭和59年は、大綱が定められてから8年目となる。この間、第1部「国際軍事情勢」で述べたとおり、一貫して続けられてきた極東ソ連軍の増強などにより、わが国周辺における軍事情勢は厳しさを増している。

 一方、わが国は、昭和52年度以降、この大綱に従って防衛力の充実整備に努力してきたところであるが、いまだ大綱に定められた防衛力の水準を達成するに至っていない。

 したがって、政府としては、この水準をできる限り早く達成することが当面の急務であると考え、防衛力の整備を推進することとしている。

 

(注) 機甲師団:一般の師団が普通科部隊を主体として編成されているのに対し、戦車部隊を主体として編成された師団であり、その火力及び機動力によって主として機動打撃に任ずるものである。

混成団:師団よりは小型であるが、師団と同様に各種の陸上戦闘機能を持つ部隊であり、外国の旅団に相当する。

特科団:各種の野戦砲(203mmりゅう弾砲、155mm加農砲など)及びロケット弾発射機を装備し、師団等の全般的な地上火力支援に当たる部隊

空挺団:空中機動により重要正面に不意急襲的に降下するなど各種の空挺作戦を遂行し、地上部隊と協力し、又は独力で敵の撃破ないし地域の確保などを行う部隊

教導団:平時は富士学校で学生の教育及び研究支援に従事するが、保有する各種の機能の均衡がとれており、有事の際は重要正面の地上戦闘に充当される部隊

ヘリコプター団:輸送ヘリコプターを装備し、普通科連隊などの戦闘部隊の空中機動及び補給品などの航空輸送に当たる部隊

第3章 日米安全保障体制

第1節 日米安全保障体制の意義

 わが国の平和と独立を確保するためには、核兵器の使用を含む全面戦から通常兵器によるあらゆる態様の侵略事態、さらには軍事力による示威、恫喝といった事態に至るまで、考えられる各種の事態に対応することができ、その発生を未然に防止するための(すき)のない防衛態勢を構築する必要がある。しかし、わが国独自でこのような態勢を築くことは不可能であることから、核の脅威に対する抑止力や通常兵器による大規模侵略に対する対処能力など、わが国防衛力の足らざるところを米国との安全保障体制に依存することとしている。

1 日米安全保障条約に基づく日本の防衛(日米安全保障条約第5条)

 日米安全保障条約は、その第5条において、日米両国は、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定している。この体制によって、わが国に対する外部からの武力攻撃は、米国の強大な軍事力と直接対決する可能性を有することとなり、侵略国は相当の犠牲を覚悟しなければならないため、侵略をちゅうちょせざるを得なくなり、結果的に侵略の未然防止につながることとなる。また、仮に武力侵略が行われるとしても、侵略国は、米国との本格的な対決を避けるような侵略態様を選ばざるを得なくなり、この結果、侵略の規模、手段、期間などが限定されることとなろう。

2 施設及び区域の提供(日米安全保障条約第6条)

 日本の安全及び発展のためには、極東の平和、さらには世界の平和が必要であることはいうまでもない。日米安全保障条約は、その第6条において、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」と規定している。同条に基づき、米国はその軍隊をわが国に駐留させているが、この在日米軍のプレゼンスは、わが国の安全のみならず極東における国際の平和と安全の維持に貢献しているところである。

3 他の分野での友好協力関係

 また、この条約は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」という名称にも表れているとおり、防衛面の規定のほかに、経済的協力関係の促進等についても規定している。すなわち、日米安全保障体制は、日米関係において、単に防衛面のみならず、政治、経済、文化などのあらゆる分野における友好協力関係の基礎となっている。

第2節 日米安全保障体制の信頼性

 日米安全保障体制をいかなる場合においても有効に機能させることが、わが国の安全をより確実に保障するための必須の条件である。

 日米間の友好協力関係と安全保障体制の信頼性を維持するためには、日米両国があらゆる機会をとらえて間断のない対話を行うことにより相互信頼と協調関係の確立を図るとともに、日米双方がそれぞれ応分の責任を果たし、同体制が有効に機能するような態勢の確保に努めることが必要である。

 このため、わが国は自ら防衛力整備の努力を行ってきているほか、第3部第3章「日米防衛協力」で述べるような協議及び協力を行っている。