資料35 鈴木善幸総理大臣とロナルド・レーガン大統領との間の共同声明(抄)

(昭和56年5月8日)

1 鈴木総理大臣夫妻は、米国政府の招待により、5月4日から9日まで、米国を公式訪問した。鈴木総理大臣とレーガン大統領は、5月7日及び8日の両日ワシントンにおいて会談し、現下の国際情勢及び日米関係につき包括的かつ充実した検討を行った。両者は、世界の平和と繁栄を目指し、緊密に協力してゆくことを約した。総理大臣と大統領は、日米両国間の同盟関係は、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれていることを認め、両国間の連帯、友好及び相互信頼を再確認した。

2 総理大臣と大統領は、ソ連の軍事力増強並びにアフガニスタンへの軍事介入及びその他の地域における行動にみられる第三世界におけるソ連の動きに対し憂慮の念を示した。両者は、ソ連のアフガニスタンへの介入が容認できないものであり、ソ連軍の即時無条件全面撤退が実現されるべきであるとの立場を再確認した。両者は、ポーランドの問題は外部からのいかなる干渉にもよることなく、ポーランド国民自身により解決されるべきであり、ポーランドに対するいかなる介入も世界平和に深刻な影響を与えるものであるとの考えをあらためて述べた。両者は、ポーランドへの介入が起きた場合には、西側先進民主主義諸国は、協力し、協調した政策を遂行すべきであるとの点で意見の一致をみた。

3 総理大臣と大統領は、アジアの平和と安定に対する双方の関心を確認し、

− 中華人民共和国との間で協力関係をそれぞれ引き続き拡大してゆくこと、

− 日本を含む東アジアの平和と安全にとって重要であるものとして朝鮮半島における平和の維持を促進すること、

− アセアンの連帯及びその構成国がより大きな強じん性と発展を追求することを助けるため引き続き協力を行うこと、

につき意見の一致をみた。

  総理大臣と大統領は、在韓米地上軍を維持するとの大統領の決定及び本年1月の総理大臣のアセアン諸国訪問に最近みられたように、この関連で日米各々が果たしているそれぞれの役割を高く評価した。

  両者は、インドシナの永続的平和回復のため、国連総会決議に基づく国際会議を通じ外国軍隊の撤退を含むカンボディア問題の早期かつ包括的政治解決が行われることが重要であることに意見の一致をみた。

4 総理大臣と大統領は、中近東、なかんずく湾岸地域の平和と安全の維持が、全世界の平和と安全にとり極めて重要であることを確認した。両者は、同地域の安全がぜい弱な状況にあることに直面しての米国の確固たる努力が安定を回復することに貢献していること、及びそれにより日本を含む多くの諸国が裨益していることにつき意見の一致をみた。両者は、また、同地域の安全を強化するため、包括的中東和平達成のための過程がさらに促進されるべきことについて意見の一致をみた。

5 総理大臣と大統領は、国際情勢の検討の過程で、世界の他の地域に種々の不安定要因が存在することに留意し、特に、アフリカ及び中米の一部地域において、平和と安定に影響を及ぼす事態が存在することにつき、懸念を表明した。

6 総理大臣と大統領は、真の意味での軍備管理及び軍縮に向けての国際的努力が世界の平和と安定を前進させ、国際問題における自制と責任を助長し、また、西側全体の安全を促進する上で果たすべき役割を認めた。

7 総理大臣は、先進民主主義諸国は、西側全体の安全を総合的に図るために、世界の政治、軍事及び経済上の諸問題に対して、共通の認識を持ち、整合性のとれた形で対応することが重要であるとの考えを述べた。

  総理大臣と大統領は、すべての西側先進民主主義諸国がその平和と安全に対するこれらの国際的挑戦に対処するに当たり、防衛、世界経済の改善、第三世界に対する経済協力、及び相互に補強し合う外交活動の分野において、−層の努力を行う必要があることを認めた。

8 総理大臣と大統領は、日米相互協力及び安全保障条約は、日本の防衛並びに極東における平和及び安定の基礎であるとの信念を再確認した。両者は、日本の防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割の分担が望ましいことを認めた。総理大臣は、日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善し、並びに在日米軍の財政的負担をさらに軽減するため、なお一層の努力を行うよう努める旨述べた。大総領は、総理大臣の発言に理解を示した。両者は、日本の防衛に寄与することに対する共通の利益を認識し、安全保障問題に関するなお一層実り多い両国間の対話に対する期待を表明した。この関連で、両者は、6月に予定されている大臣レベル及び事務レベル双方での日米両国政府の代表者による安全保障問題に関する会合に期待した。

 

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