資料31 昭和58年度から昭和62年度までを対象とする中期業務見積り

 整備方針  昭和57年7月23日

国防会議了承

1 昭和58年度から昭和62年度までを対象とする中期業務見積りについては、同見積り案の作成に際しての長官指示(昭和56年4月28日長官指示第2号)に基づき、「防衛計画の大綱」(昭和51年10月29日国防会議・閣議決定。以下「大綱」という。)の「別表」に定める基幹部隊、主要装備等を中核として、大綱に定める「防衛の構想」に従いその「防衛の態勢」及び「陸上、海上及び航空自衛隊の体制」を量的にも質的にも備えた防衛力を、原則としてその完成時において保有することを基本的目標とし、

(1) 四面環海の我が国の国土、地勢等に適した防空能力、対潜能力、水際防御能力等の充実近代化、

(2) 電子戦能力、継戦能力、即応態勢及び抗たん性の向上を特に重視し、

(3) 指揮通信、後方支援及び教育訓練態勢の充実近代化にも配意して作成する。

2 ただし、厳しい財政事情、財政負担の平準化の必要性、要員確保、施設取得の困難さ等にかんがみ、次のことを考慮するものとする。

(1) 隊員の充足及び緊急時における急速取得が比較的容易と認められる装備品等の充足については、警戒のための態勢、教育訓練の態勢等に支障を生じない範囲にとどめる。

(2) 装備品等の量的及び質的充足については、装備品等の耐用命数、期間中の減耗状況、防衛生産・技術基盤の安定的維持向上の必要性等との関連において計画的に充実近代化することによって達成できる程度にとどめる。

(3) 期間中に質的に満足する装備品等を選定し、整備することが困難なものについては、現状の充足にとどめる。

(4) 新たな用地の取得等を必要とする装備品等の充実については、用地の確保が見込める範囲にとどめる。

 主要整備内容

1 編成

(1) 部隊等の新改編

ア 低空侵入に対する早期警戒監視体制の不備を是正するため、警戒航空隊を新編する。(航空自衛隊)

イ 航空戦闘の戦技の開発、教導及び評価の実施体制を改善するため、航空総隊司令部飛行隊、飛行教導隊、教導高射隊等を廃止し、航空教導団(仮称)を新編する。(航空自衛隊)

ウ 航空救難に係る指揮系統の合理化を図るとともに、端末空輸態勢を確立するため、航空救難団、航空方面隊司令部支援飛行隊等を廃止し、航空方面隊及び南西航空混成団に救難・支援航空隊(仮称)を新編する。(航空自衛隊)

工 陸上防衛態勢を全般的に改善するため、陸上自衛隊の作戦基本部隊等の編制の近代化について引き続き検討し、成案を得て改編に着手する。(陸上自衛隊)

オ このほか、陸上、海上及び航空自衛隊を通じ、装備品の取得等に対応し、所要の部隊等の新改編を行う。

(2)増員

ア 装備品の取得、部隊等の編成等に伴い、所要の海上自衛官及び航空自衛官を逐年増員する。

イ 陸上及び海上自衛隊の予備自衛官を逐年増員するとともに、新たに航空自衛隊においても予備自衛官を採用し、その整備を図る。

2 情報、通信及び部隊運用

(1) 我が国の領域及びその周辺海空域の警戒監視並びに必要な情報収集を常続的に実施するため、各種情報収集手段の整備等を行う。

(2) 中央及び各部隊の指揮通信能力を向上するため、引き続き、中央指揮所、防衛マイクロ回線等を整備するとともに、自動警戒管制組織、自衛艦隊指揮支援システム等の近代化、超長波送信所等の整備を推進する。

(3) 電子戦能力等の向上を図るため、各種の施策を推進する。

3 人事及び衛生

(1) 部隊等の任務を円滑に遂行するとともに、即応態勢を向上するため、自衛官の充足率の向上に努める。

(2) 引き続き、自衛官の停年年齢を延長するための施策を推進するとともに、退職予定隊員に対する就職援護施策の充実強化を図る。

(3) 所要の隊員を確保するため、募集体制の強化を図るとともに、老朽隊舎の建替え、宿舎の整備等の施策を推進し、生活環境の改普を図る。

(4) 隊員の任務遂行に必要な高い健康水準を維持増進するため、各種保健医療施策の整備充実を図る。

4 教育訓練

(1) 教育訓練の支援体制を強化するため、AH−1S、P−3C、F−15用フライトシュミレ一夕一等新装備の導入に伴う所要の教材、訓練装置等を整備するとともに、教育訓練用弾薬及び燃料を確保する。

(2) 部隊等の練度を向上させるため、訓練評価装置、電子戦訓練器材等を整備するとともに、米国との共同訓練、国外派遣訓練等を充実強化する。

(3) 引き続き、硫黄島の訓練施設等を整備するとともに、演習場等の整備を行う。

5 装備

(1) 陸上自衛隊

ア 火力、機動力、対戦車火力等を充実近代化するため、戦車373両、火砲354門(うち自走122門)、装甲車240両、対舟艇・対戦車誘導弾発射装置78基、無反動砲等を整備する。

イ 空中機動による遠距離迅速反応火力等を充実近代化するため、対戦車ヘリコプター(AH−1S)43機、輸送ヘリコプター(V−107)の後継機(CH−X)16機、多用途ヘリコプター(HU−1H)53機、観測ヘリコプター(OH−6D)64機等作戦用航空機178機を整備する。

ウ 要域の防空火力を強化するため、引き続き、1個高射特科群の地対空誘導弾ホークの改装用装備品等を整備するほか、短距離地対空誘導弾47基、携帯式地対空誘導弾468基を整備するとともに、将来の防空体系について速やかに検討を行い、残余の2個高射特科群の地対空誘導弾ホークの後継(SAM−X)に関する今後の整備方針を決定し、所要の措置を講ずる。

(2) 海上自衛隊

ア 艦艇による周辺海域の防衛能力及び海上交通保護能力を充実近代化するため、護衛艦14隻、潜水艦6隻、掃海艇、ミサイル艇、輸送艦、補給艦等の各種艦艇49隻を建造するほか、現有護衛艦2隻の改修を行い、能力向上、艦命の延長を図る。なお、護衛艦等の建造、改修に当たっては、対潜能力の充実とともに、防空及び水上打撃能力を向上するため、ミサイル装備化等その性能向上に努める。

イ 航空機による周辺海域の防衛能力及び海上交通保護能力を充実近代化するため、固定翼対潜哨戒機(P−3C)50機、対潜ヘリコプター(HSS−2B)61機、掃海ヘリコプター(V−107)の後継機(MH−X)12機等作戦用航空機125機を整備する。

(3) 航空自衛隊

ア 防空戦闘能力、航空輸送能力等を充実近代化するため、要撃戦闘機(F−15)75機、支援戦闘機(F−1)6機、(FS−X)24機、早期警戒機(E−2C)1機、輸送機(C−130)8機、輸送ヘリコプター(CH−X)6機合計作戦用航空機120機を整備する。

イ 将来の防空体系に関し速やかに検討を行い、地対空誘導弾ナイキJの後継(SAM−X)に関する今後の整備方針を決定し、所要の措置を講ずる。

(4) 共通事項

ア 継戦能力の向上を図るため、弾種間の均衡に配意しつつ、弾薬備蓄を推進する。

イ 即応態勢を向上させるため、引き続き、機雷・魚雷の実装化及び実装調整場、完成弾庫等の整備を推進するほか、機雷敷設等の機能について検討し改善する。

ウ 航空基地、レーダーサイト等の抗たん性を強化するため、短距離地対空誘導弾、携帯式地対空誘導弾、対空機関砲、移動警戒隊等を整備するほか、航空機用掩体の建設等を推進する。

エ 航空救難態勢を充実近代化するため、救難飛行艇(US−1A)、救難捜索機、救難ヘリコプターを、教育訓練を円滑に実施するため、中等練習機(XT−4)、教育訓練用ヘリコプター、訓練支援艦等を整備する。

6 施設

(1) 装備品の取得、部隊等の編成等に必要な施設を整備する。

(2) 弾薬施設、燃料施設、港湾施設、教育訓練施設等現有施設の不備是正を図る。

7 研究開発

  我か国の地勢、国情に適した装備品等の研究開発、防衛技術水準の向上のため、地対艦誘導弾、新戦車、中対戦車誘導弾、装甲戦闘車、新高射機関砲、新対潜ヘリコプター(艦載型)システム、対潜用短魚雷、新型機雷、深々度機雷掃討装置、中等練習機、格闘戦用ミサイル、次期警戒管制レーダー、ECM装置、ターゲット・ドローン等技術研究本部の実施する技術研究開発のほか、新装備等の運用に関する研究を推進するとともに、試験評価機能の整備等を図る。

8 その他

(1) 環境保全

 航空機騒音、水質汚濁、海洋汚染等を防止するため、消音装置、汚水処理施設等の整備を推進する。

(2) 海洋気象観測、航空保安

 海洋気象観測及び航空保安管制能力の向上を図るため、海洋観測艦及び所要の器材等を整備する。

(3) 災害救援

 救難用航空機その他の装備を整備し、災害救援体制の充実を図る。

III 経費の概略

  主要整備内容のうち、正面装備の取得のために昭和58年度から昭和62年度までの間に必要とする経費の概略は、昭和57年度価格で4兆4千億円ないし4兆6千億円と見積もられる。

大綱「別表」分類による比較

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