資料31 いわゆる奇襲対処の問題について

(昭和53年9月21日)

1 自衛隊法第76条の規定は、外部からの武力攻撃(そのおそれのある場合を含む。)に際して、内閣総理大臣が我が国を防衛するため必要があると認める場合に、国会の承認を得て自衛隊の全部又は一部に対しいわゆる防衛出動を命じ得ることを定めており、この防衛出動の命令を受けた自衛隊は、同法第88条の規定により我が国を防衛するため必要な武力を行使し得ることとされている。

このように、外部からの武力攻撃に対し自衛隊が必要な武力を行使することは、厳格な文民統制の下にのみ許されるものとされており、したがって、防衛出動命令が下令されていない場合には、自衛隊が右のような武力行使をすることは認められていない。

2 自衛隊法第76条は、特に緊急の必要がある場合には、内閣総理大臣が事前に国会の承認を受けないでも防衛出動を命令することができることとされており、しかも、この命令は武力攻撃が現に発生した事態に限らず、武力攻撃のおそれのある場合にも許されるので、いわゆる奇襲攻撃に対しても基本的に対応できる仕組みとなっており、防衛上の問題として、いわゆる奇襲攻撃が絶無といえないとしても、各種の手段により、政治、軍事その他のあらゆる情報を事前に収集することによって、実際上、奇襲を受けることのないよう努力することが重要であると考える。

3 自衛隊がいわゆる奇襲攻撃に対してとるべき方策については、右に述べた見地から情報機能、通信機能等の強化を含む防衛の態勢をできるだけ高い水準に整備するよう努めることがあくまでも基本でなければならないが、更に、いわゆる奇襲攻撃を受けた場合を想定した上で、防衛出動命令の下令前における自衛隊としての任務遂行のための応急的な対処行動のあり方につき、文民統制の原則と組織行動を本旨とする自衛隊の特性等を踏まえて、法的側面を含め、慎重に検討することとしたい。

 

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